かていがげんじつのはなしとなったないんがなものだていしょうしたほんにんがじっけんだいとはなではあのせっしょくじっけんがげんいんであんがいそれだけではないかもな
アスカちゃんママねきょうはアスカちゃんのだいこうぶつをつくったのすききらいするとそこのおねえちゃんにわらわれますよ
かのじょなりにせきにんをかんじているのでしょうしかしあれではまるでにんぎょうのおやこだにんぎょうはにんげんがじぶんのすがたをもしてるくったものですから
しかしきみのくちからそんなことばがでるとはねわたしもいしであるまえにひとりのじょせいですわ

 

えらいわアスカちゃん

 

ウルサい。

 

 

 

(衣擦れと喘ぎ声)

 

 

 

耳を塞いだって聞こえてくる、壁越しの、声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、あの夢が…
 アタシは、嫌な感じに目を覚まし、自分がもの凄く汗をかいていることに気づく。

 

 

 

 あの夢が…

 アタシを縛りあげる。

 

 

 

 

わたしはあなたのもの。(前篇)
Writen by PatientNo.324

 

 

 

 

「聞こえる?アスカ、シンクロ率8も低下よ」
 インカムから聞こえてくるリツコの声。

[やってるわよ!」
 インダクションレバーを握ってるあたし。
 解っているんだから、言わなくてもいいじゃない…

 どうせ、アタシはシンジ以下よ…



 アタシは通信機の電源を落とした。

 

 

 

「女だからって何でこんな目にあわなきゃならないのよ! 子供なんて絶対いらないのに!」

 シンクロ試験が終り、制服に着替えてから、また襲ってきた、あの痛み。トイレに掛け込んで、便座に腰かけて、股をみると、血にまみれてる。汚れをウェットティッシュで拭き取り、それからナプキンをつける。

 

 

 だけど、痛みは消えない。

 

 子供なんていらない…

 あんな目に遭わせるくらいなら…

 アタシは…いらない。

 

 

 

 

 

 本部から、駅に行き、そしてホームに上がると、そこには先にシンジとファーストが来てた。

 何か…話をしてる。

 

 一ヶ月も取り込まれてたくせに、…すっかり元のさやに戻っちゃって…

 

 言いようの無い感覚が胸を覆っていく。黒くて、刺々しい…

 無視したい筈なのに、目が、シンジから離れてくれない。

 

 胸を覆っている感じは、多分嫉妬。

 だけど、なんでアタシが嫉妬なんかしなくちゃいけないのよ…馬鹿馬鹿しい…

 

 

 

 アタシはシンジ達が乗った電車ではなく、その後に来た電車で家に帰った。

 家ではシンジがいつものように晩御飯を準備してたけど…表情が浮かない。

 

「どうしたのよ、浮っかない顔してさぁ? 折角ファーストと再会出来たってぇのに?」
「うん…」

 明るくない。くそ、なんでこんなヤツにいらいらしなくちゃいけないんだろう…

 

 シンジは出来上がった料理をテーブルに並べる。今日は和食…

 

「納豆なんか出すなっつたでしょう!」
 嫌がらせかしら?

 全く…

 テーブルにでてた納豆をアタシは塵箱に投げ捨てる。

「納豆…好きなのに…」
 シンジが凄く残念そうな顔をしているが、アタシはあの臭いがキライだ。

 今日のご飯は・・・鶏の手羽先と大豆の煮物。アタシは大豆を一つずつ口に運ぶ。

 ようやく使いこなせるようになったお箸。
 シンジは、気づいてくれて無いけど…

 

 

「で、アンタはなんでそんなに暗い顔してんの?」

 食事が始まってからもシンジは暗い顔をしてる。

「あ、うん…なんでもないんだ……」
「あーんーたーねぇっ!」

 アタシは思わずシンジの口に自分のお箸を突っ込んで、その口を広げてあげた。

「そんなに暗い顔してんで、重苦しく『なんでもないんだ』ってねぇ、何かありました―って言ってるようなもんでしょう!ムカっつくのよっ!」

「ひ、ひひゃひひょあふあぁ〜」
涙声になってるシンジ。自業自得だ。

「んで? アタシの機嫌はあんまりよくないんだから、しゃきしゃき、要点まとめて、簡潔に、解りやすく説明してね?」

 なんとなくミサトみたくてイヤな感じがした…

「うん…綾波と、喧嘩したんだ…」
 箸を置いて俯いたシンジ。
「なんで、喧嘩したの?」
「なんで、こんな時期に日本を離れたんだって…」
「で、アンタはなんて答えたの?」
「あ…いや…」
「何?」

 凄く答え難そうにしてる。

「言いなさい!」
 とりあえず強要してみる。必要ないのだけれど

「あの…アスカが、心配だからって…その…」
「アタシもアンタに心配されるくらいに落ちぶれるなんてねぇ〜っ」

 

 ん?

 シンジの顔…アタシを見つめてる…?

 

「何よ…?」
 ちょっと低い感じの声で。

「いや、何で顔が赤いの…かなって」
「五月蝿いっ!」

 思わず手が出てしまった。

「ごちそうさまっ!」

 そのとき、電話が鳴る。 

 誰宛てに掛かってきたのか…アタシは『怖かった』。

 

シンジが電話に出て…嫌味の一つも言おうかとおもったが、止めておいた。シンジがこちらを向いているから。

「アタシ?」
「ドイツから国際電話。アスカに、お母さんから」
「アタシに…ママから? 貸しなさいよっ」

Hallo, Mutter?
………
Wir haben gerade eine Mahlzeit beendet. Was Mutter anbetrifft?
……
Soll ich ihn vorstellen? Sie ist vielleicht... daß Recht hat. Jedoch ist er nicht sociable. Ja ist sie auch zutreffend.Es ist so gut.



……………
Ich spreche nie, auch. Wieder folgendes Mal. Schneiden Sie es.  gute Nacht.

 アタシは受話器を元に戻して、溜息を吐く。と、シンジがコッチを見てる。

「ずいぶん、長電話なんだね」
「イツモノコミュニケーションてやつ?」
「いいな、家族の会話…」
「ま、上っ面はね 本当のお母さんじゃないし…」

 シンジの顔が微妙に翳りを帯びる。

「でもキライって訳じゃないのよ、ちょっと苦手なだけ」
「そう…」
「…ってなんでこんなことアンタに話してんのよ!」
 アタシ、シンジの前から逃げるようにして部屋にかけ込む。

 

 なんかなぁ…調子狂うのよ。アタシはアイツの機嫌を取る必要なんかないはずなのに…

 

 でも…ああっまたおなかが痛くなってきたっ!

 なんでアタシが…

 

 痛み止めは、リビングにある救急箱の中だ…

 嫌々ながら、重い足をリビングに向ける。

 

 と、テーブルにシンジが座ってた。

「薬…」
「あ、うん…」

 シンジが救急箱を取って来てくれる間にアタシはテーブルに座る。

 温かいお茶…タンニンが含まれてない焙じ茶をシンジが入れてくれた。

 アタシは錠剤を口に入れて少しのお茶と一緒に飲み込む。

「あの…」

 シンジがおずおずと口を開いた。

「何よ?」

 薬を飲んでとりあえず安心したアタシ。

「やっぱり…痛いの?」

 

 このブァカ、殺してやろうかしら?

 

 物騒な考えが頭を過ぎっていく。

「痛いわよぉ〜?」
 アタシの顔がサディスティックに歪んでいく。

 反比例してシンジの顔がマゾヒスティックに歪んでいく。

 

 やっぱりコイツはいい玩具だ。憂さ晴らしにつかおっかな。

「そうねぇ…剥き出しの内臓を下の方からナイフでチクチクと突き刺してくれる感じかしら?
酷い子だと寝込んで動けなくなるくらいだから…ねぇ?
といってもアンタにはわかんない…でしょうけど…一度味わって……みる?」

 うん、泣きそうなシンジの顔って、さっきの痛み止めよりもきっと効果がある。凄くすっきりする。

「ありがとね、お茶。おなかが温かくなったから少し楽になったわ」
「あ、うん」

 きょとん、とした顔して…あ、照れてる。

 

 解りやっすいなーっホント♪

 読みやすくて、…うん、アタシに従順っていうか……

 

 

 うん、可愛いかもしれないぞ。

 

「じゃ、アタシ寝るわね。おやすみ」
「うん、おやすみ」

 

 アタシの機嫌がいいと、嬉しいらしい。

 何か…子犬みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮定が現実の話となったな。因果なものだ提唱した本人が実験台とはではあの接触実験が原因でしょう精神崩壊それが結果かしかし可愛そうだな、あんな子供を残して案外それだけが原因ではないかもなアスカちゃん? ママねきょうはアスカちゃんの大好物を作ったのよ?そこのおねえちゃんにわらわれますよ彼女なりに責任をかんじているのでしょうしかしあれではまるでに人形の親子だ人形は人間が自分の姿を模して作ったものですからもし神がいたら人間はその人形に過ぎないの私も医師の前に一人の女ですわえらいのねアスカちゃん

 

 

 

 

まただ…

ちくしょう…

 

 

 

 

 

 

 

「アスカ?」

 何?

 声が…シンジ?

 ふと、見上げると暗がりの中にシンジがいる。

「どうしたの? 大丈夫?」
「なんでもないわ…平気よっ」

 アタシは布団に隠れて強がる。

「本当に…?」

「なら…いいんだけど…」

 

 明かりの無い部屋なのにシンジが凄く寂しそうにしているように…はっきりと解る。

 

「じゃ…おやすみ…」

 

 あーもうっ!

 

「待ちなさいよっ」
「な…に?」
「おなかいたいからさすって。」

 

 アタシは枕元の電気スタンドを点ける。

 今度はシンジの貌がはっきりとわかる。

 ちょっと困惑気味…かしら?

「いいの…?」
「そっちの方が楽になるかもしれないでしょ、ものは験しよ」

 

 電気、消そうかな? また顔が赤くなってそうだから。

 おずおずとシンジがアタシに近づいてきて、枕もとに座り込む。

布団をめくって…

「寒い。」
「でも、こうしないと、おなか触れないよ?」
「やだ、寒いっ布団おろしてっ」

 うーん…アタシにはやっぱりサドの気があるのかな?
違う、コイツが犬みたいだからいけないんだ。ついつい苛めたくなってしまう。所在無さげにしてるシンジが悪いんだ、うん。

「アンタも、布団に入れば、いいじゃないの」
「えっ?!」

 やっぱり、電気は消して置くべきだった。耳の毛細血管が破裂したくさい。暑いぞ、凄く。

「痛いんだからさっさとして! イヤなら出てけ!」
「わかったよぉ…」

 シンジは凄く怖そうにアタシの布団に入ってくる。アタシが取って食うわけでもあるまいに…失礼なヤツ。つーか、アタシ理不尽?

「えっと…」
「ひゅあっ!!!!」

 かなり、ビックリした。
 なにを勘違いしたのか、シンジはアタシのパジャマの裾から手を突っ込んで、直接摩ってきたから。

 うーん…裸を見られた間柄っても…恥かしいぞヤッパリ。

「こんな…感じでいいの?」
 凄く慣れない…ううん、怖がった手つきでアタシのおなかをさすってくれるシンジ。

 なんとなく気持ち好くて良い感じ。

「うん…」

 ほんのりした感じでいいかもしれない…

 

「ねぇ…」

 アタシはせがむ。
 でも…やっぱりアタシは女なのか…

 シンジに甘えたいのか、アタシは。
 どこかでそれを否定するのに
 多分、身体が、求めてる…あの女のようにはなりたくは無いのに…

 ああ、そうか、アタシは…

 

「ねぇ…犬シンジ。」
「な、なんだよそれ!」
「だって、アンタ犬みたいなんだもん、良いじゃない?」

 うーん、さすがにシンジ、これには怒ったらしい。何せ人間扱いされないんだもんねー。

「だって、犬って僕だって、それなりにプライドが…」
「そんなものいらないわよ、アタシの前では…」
「そんなものって気安く…うんっ」

 

 阿呆なことを言う口はこうして『お仕置き』をしてやる。アタシの口で塞いでやる。

 

「あ…っと…」

 ほら、黙った。中々に仕込み甲斐があるかもしれない。

「いいわね、アンタはアタシのペットなの。だからアタシの言うことは絶対なのよ。いいわね。そのかわり、いい子にしてたらご褒美があるから…」

 あ、顔赤くなってる、かわいーっ♪

 

「解った? 犬シンジっ」

 


 そうよ、アタシが手に入れたのはペットなのよ、アタシだけを見てくれる、アタシになついてる、アタシに従順な、アタシだけのペット。

 いい子のペットにはご褒美あげなきゃ。

 アタシは紅くなったシンジの頬にも一度口付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

「シンクロ率、12.8%。起動指数ギリギリです」

「ひどいものねぇ。昨日より更に下がってるじゃない」
 容赦のないリツコの声。

「アスカ、ちょっと調子悪いのよ、2日目だし」
 ミサトが弁護してくれている声がスピーカーから聞こえてくる。
 でも、アタシはその声を嬉しいとは思えなかった。
「シンクロ率は身体状態の表層の意識に左右されないわ。 アスカ、上がっていいわ」

 

 アタシは家に帰るためにエレベーターに乗り込むと、そこにはファーストがいた。

 沈黙――いつものように、ファーストは何も喋ろうとはしない。重苦しさに耐え切れなくなったアタシは鼻をならす。

 

 

「こころをひらなかなければエヴァは動かないわ…」

 アタシの方を振り返らず、扉に向かったまま呟く。でも、アタシに向けた言葉ってことは確か。

「心を閉じしてるてぇの? このアタシが」
「そう エヴァには心がある…」
「あの人形に?」
「解ってるはずよ…」
「はん、アンタから話し掛けてくるなんてねっ
 何よ、アタシがエヴァに乗れないのがそんなに嬉しい?
 心配しなくったって使徒が攻めてきたら,無敵のシンジ様がやっつけてくれるわよっ! アタシ達はなにもしなくていいのよ!
 アタシ達はいらないのよシンジだけがいればいいのよ!!!」

 アタシは…そう、役に立たないんだから。

「あーあ、シンジだけじゃなく機械人形みたいなアンタなんかに心配されるなんてヤキがまわったわねぇ〜」
 自分が酷く醜く感じるのは、間違いじゃない。でも止まらない。

「私は人形じゃない」
ようやくファーストはアタシの方に振り返り、アタシを睨みつける。

「アンタ碇司令が死ねっていったら死ぬんでしょう?」
皮肉を込めた口調。だけど。

「ええ、そうよ」
ファーストは、躊躇いもなく、肯定した。

「やっぱり人形じゃない! アンタ昔っから人形みたいで大っキライなのよ!」
 アタシは、思わず頬を叩いた。

 思い出したくないものを思い出させてくれたから。

 畜生…っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日――今日も起動試験が行われる予定だったので、アタシはプラグスーツに着替えて、弐号機の前に居る。

「やっと元に戻ったわね。 あんな負け方したくせに…
 あなたはアタシの人形なんだから、黙って私の言う通りに動けばいいのよ…」

 アタシの成績が芳しくなかった事もあって、弐号機の修復作業は後回しにされ、今日になってようやく完全な姿に戻ってきた。

「何で兵器なのに心があるのよ、邪魔なだけなのに…とにかく、アタシの命令に逆らわなきゃいいのよ」

『エヴァには心がある』
 ファーストはそう言った。弐号機がどうかは知らないけど、初号機には、シンジが操作してないのに動いた――暴走の記録が幾度もある。テストタイプとプロダクションタイプの違いがあったとしても、それは装甲―拘束具や、機械部品の話。本質的に違っているわけではない。
 なら、この弐号機にも、心と呼べるものがあるのか…何故だろう…

「ばっかみたい…」

 

 機械に心が、魂が宿るわけないじゃない。きっとあれはテストタイプ故の暴走だし、ファーストの考えは、夢見る妄想少女のものなのよ。

 アタシはそう考えることにした。

 

 

 

 

 そして、警報が鳴り響き…

『総員第一種戦闘配置! 対空迎撃戦用意!」

 

使徒、まだくるの?

アタシは、迷うことなく、エントリープラグに飛び込む。

アタシは、汚名を返上しなくちゃいけない。エースパイロットの地位を取り戻さなくちゃいけないから。

 

 

 ミサト達は発令所で作戦を立ててるみたい…

『零号機発進、超長距離射撃用意。弐号機=アスカはバックアップとして発進準備』
「バックアップ? アタシが?零号機の?」
『そうよ? 後方に回って頂戴』
「冗談じゃないわ。弐号機発進します!」

 アタシはカタパルトを強制射出させる。

 

 シンジは…出てこれない。凍結命令が出てるから。
 警報が鳴り響き、ポジトロンライフルが射出される。

 アタシはコネクタを接続する…
「これを失敗したら、多分弐号機を降ろされる…ミスは許されないわよ、アスカ…」

 

 自分を叱咤してみるけど…使徒は降りてこない。

「もうっさっさと下りてきなさいよ、じれったいわねぇっ」

 

 ライフルのマークが使徒に一致した時、アタシは貫かれた。

 

 

 

光に。

何かがアタシの中を掻き回していく。

どうしようもない位の不快感。

 

「こぉんちくしょぉぉぉぉぉっ!」

アタシはたまらずライフルの引き金を引く。

 

 でも、届かない…

 アタシは撃ちまくる―町が壊れてく。

アタシが壊れる、壊される。侵食されていく。

 

「アタシの中に入ってこないでぇぇぇっ!」


Nein
Selbstmord
Erhangte
オネガイ…
サワラナイデ
イッショニ…
ヤメテ
Geburt
Menarche
Wissenschaftler
(解読不能)
Bevorzugung
Nein
オネガイ
イヤ!
...EineAufgabealsMutter
der Verlust
Nein
Tod

 

「アタシの心まで覗かないでぇ! お願いだから心を犯さないでぇ!」

 苦しいよ…

 

『アスカ戻って!』
「イヤよ!」
『命令よ、アスカ撤退しなさい!』
「イヤよ今撤退するなら此処で死んだほうがマシよ!」
『アスカ!』

 わかんないのよ、ミサトなんかに…

アタシの事なんか全然解ってないのよ。

 

 

 

 零号機がようやくお出ましで…ポジトロンライフルを発射するけど…ATフィールドを打ち破ることは出来ない。

 

 

 アタシは―――侵食される。

 

 過去を掘り返されて、アタシがさらけ出されて、貪られる。

 

 


 小さいアタシは縫いぐるみを抱きしめて泣いている…なんで? もうアタシは泣かないって決めたのに

 

 『どうしたんだアスカ? 新しいママからのプレゼントなのに 気に入らなかったのか?』
 『いいの。』
 『何がいいのかな?』

 アタシに媚びるような男の声。

 「アタシは子供じゃない。早く大人になるの。だから縫いぐるみなんて要らないわ!」
 アタシは縫いぐるみを踏みつける。

 

 場面が切り替わる。

 繰り返し開かれる扉。

 その先にあるのは…

 

 きっと快楽か、死か。

 

 一緒にシンでちょうだい

 オネガイだから私を殺さないで!

 私はママの人形じゃない!

 自分で考え自分で生きるの!

 パパもママも要らない!一人で生きるの!

 

 

イヤッこんな事思いださせないで!折角忘れてるのに…掘り起こさないで

 

そんな嫌な事もう要らないのょぉ…

もう止めて!

止めてよ……

 

 


 首を吊った人形
 私は…もう生きる事を許されていないもの(だって心はこの身体にないから)
 『一緒にシンで頂戴・・・』
 「うん、一緒に死ぬからママを止めないで」
 『何? 知らないわ』
 だって私はここにいないのにあなたは私を知っている。
 『アナタ…だれ?』
 『貴方知らないわ』
 もウ、アナタの知ってる私は此処にはいないのよ。

 小さなアタシは、泣きながら、ママにオネガイをしている…

 

 


 惣流アスカラングレーですよろしく

 よろしく

 あんたばかぁ?

 ちゃぁんす
 だからアタシをミテッ!

 アタシじゃないアタシがアタシの真似をしているけど、これはアタシなの?

 誰なの?

 複数ノアタシがアタシの真似をしているのにでもアタシは何処にいるの?

 アタシだれ?

 

こんなのアタシじゃなぁい!

 

電話機を叩き落とす音。

硝子が砕ける音。

 

サイレン。

 

鉄道のレール。アタシは歩いて…

人の群れに押し潰されてるのに…

笑い声は誰を笑ってるの?ねぇっ!?

 

助けて、ねえっ!!!

 

助けて!ねえ助けてよ!

 

 

だからアタシを見てよ!

 

(デモね…?)

だれも誰もアタシを助けてくれない。

 

 

泣き叫んでも、誰も見てくれない。

 

赤く、黒く塗りつぶされた絵。

 

 

 

梁に紐を吊るして首を吊る。

 

アタシの…知ってること。

 

 

アタシは誰もいない、冷たい床に蹲る。

さびしいの?
さびしいの?

小さなアタシが問い掛ける…

 

 

違う!傍に来ないで!


ワタシは一人で生きるの!
誰にも頼らない!
一人で生きていけるの!

でも…

 

アタシの事好き?

ねぇ…本当にアタシの事好き?

喘ぎ声

アタシの声…誰を想って…?

誰を想ってアタシは喘いでるの?

アタシは、小さなアタシを見上げる。

 

『…嘘ばっかり』

笑った小さなアタシは、人形だった。ボタンの瞳がアタシを射抜き、フェルトの口がアタシを嘲笑う。

 

 

 

 

 

 

 

(絶叫)

 

 

 

 

 

 

 

割れた。

 

砕け散った音が聞こえる。

アタシだけに…

 

 

 

 

 

汚されちゃった…アタシの心が…汚されちゃったよ…ねぇ…汚されちゃったよぉ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インカムから聞こえてくる発令所の音…

 シンジが出るって言ったけど、却下されたみたい…必死で…叫んでるけどさ…

 

 アンタも、やっぱり何も出来ないのね…クククク

 

 アタシは、嘲笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零号機が…ファーストが…知らない武器を持って出てくる…

 

カウントダウンが聞こえて…

 

投擲されて…

 

 

 

 

 

使徒は消失した。

跡形もなく。

 

 

 

 

 アタシは、汚染防壁が解除された後でようやく解放された。

 ビルの屋上からは、弐号機が見える。収納されてく…また……

 

 

 また、アタシは何も出来なかった。

 

 

「良かったね、アスカ、」
「五月蝿いわね、ちっとも良くないわよ!
よりにもよってあんな女に助けられるなんて!
そんなことなら死んだ方がマシだったわよ!

みんなキライ!だいっキライ!!!」

 

アタシは、叫ぶ。

 

 

「アスカ…」

 

 

シンジは、動こうとしない。

 

「あっちにいきなさいよ!
そんなにアタシのブサマな姿が見たいってぇの?」

「違う…違うよ、アスカ…」
「何よ!」

「僕は…出撃する事も出来なかった…本当に何も出来なかったのは…僕だ…」

 

 

シンジは、泣いていなかった。

けど、哭いていた。涙は流れてなかったけど…

 

シンジは、きっと、泣いてた。

 

 

 

 

 

前篇 おしまい。
中篇へ続く。


PostScript=あとがき

  こんにちは、患者三二四号でし。お読みいただけた方、へっぽこな作品にお付き合い頂き、誠にありがとう御座います。

すごく間が空いてしまいました…。とっくに書き上げていたのですが、推敲する時間が取れなかったため、伸びてしまいました。残念。(何が?)

 
 今回はアスカの一人称で統一してます。 つか、TV版だとシンジ殆ど出てこないんだもん(笑)
 途中のドイツ語は訳文を一応ソース内に埋め込んでありますので、そちらを参照してください。(文法の突っ込みは勘弁してください^^;)
 
 本編に沿って話を進める事、それからアスカのみに焦点を当てたかったので3人称および、他の人物からの視点でのみ得られる(アスカが知り得ない)情報については割愛してあります。
 本編に沿っていく展開になるってことで久々に(二年ぶりか?)LD見たんですが…アスカという人間を見直すと…

 アタシはやっぱり気軽なベタ甘なSSが書けません。…アスカの境遇で彼女が得たものは…崩壊した母親による放置、父親の不義……仮面(表層に現れた自我)が意味するもの……LD拾壱巻のジャケットのアスカが何を見ているのか…
 アスカは『甘いだけのお菓子』としては不向きなキャラクタ(Personality)だと思います。砂糖が塗してあっても、毒の匂いが漂う。甘い味がしてもお菓子にはなれない。きっと食べたら口の中に何かが突き刺さる、そんな感じのヒトかなぁ…とアタシは思ってますが。

彼女の中において、自らと同格であると定義されるべきはどういった人物であらねばならないのかを考えたとき…さてさて。

 既に本編放映からかなりの時間が経過し、星屑の如く数多存在する二次創作…各々の中でアスカ、シンジ、レイ、ゲンドウ・ミサトなどの性格が決められていると思いますが、この話ではアタシなりの彼等、彼女等の解釈で進めていきます。何をか含まれる点も出てくるでしょうが、何卒ご容赦のほどを。

 ではでは。

 

 

Patient No.324 mail
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