呪縛・贖罪・癒し





もう、貴女は必要ないわ  資格を失った者にここにいる理由はないの  ごめんなさい・・・・・  あの・・・・いろいろあったけど・・・・元気で
さよなら ああ、セカンドチルドレンは抹消だ いいのかね? 変わりはいくらでもいる そう、でもあんな危ないところから離れられて良かったと思うわ

「じゃあ、アスカ」

!!!!!!!!!!!!!!!!!

突然聞こえた声の方に振り返ると黒髪の少年と空色の髪の少女が手をつないで歩いている。
少年の表情は明るく楽しそうに、そして少女の頬はほんのりと赤く染まっている。

どくん・・・・・・どくん・・・・・・ドクン


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」




その叫びは気が狂わんばかりの金切り声 −適格者で無くなった自分は捨てられた− エヴァに魅入られ、エヴァに全てを捧げた少女。

惣流・アスカ・ラングレー

自分の手から全てがすり抜けていく感覚、自分がこの世から崩れ去っていく幻覚。
突然目の前に現れた少年 −碇シンジ− が全ての始まりだった。

こいつさえ居なければ こいつさえ居なければ こいつさえ居なければ!!!

アスカはシンジの首に手を伸ばす

「ぐっ・・・・・・」

アスカの瞳には狂気が宿っていた −もう何も無いのなら全てを壊してやる−

「それで貴女は満足なの?」

突然かけられたその声と哀れむような視線がアスカを更に追いつめる。

「じゃ、さよなら」

紅い瞳の少女は無感動に別れを告げシンジとアスカの元を離れていった。

その姿に驚くアスカは自分が首を絞めている人物をゆっくりと見た。

「!!!!!!」

その首は自分を絞めていた。

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「もう、私はいらないもの」

嬉しそうに呟きながら首を絞められているアスカは笑っていた。














「・・・・・・・・か、・・・・・・・す・・・・・・・・、・・・・あす・・・・、・・・・アスカ!」

突然、大きく目を開き天井を凝視する。

「う・・・・うぁぁぁぁ・・・」

ベッドの上で小さく、呟くように泣き始めるアスカ。
そんなアスカを一人の青年は優しく抱きしめる。

「もう、大丈夫だから・・・・・・大丈夫だよ、アスカ」

アスカは身体を丸めて青年の胸の中で泣き続ける。
過去との決別がどれだけ難しいか青年は知っている。
目の前の妻がうなされるように、青年にも振り切れない過去がある。
気丈で強く、決して振り返らない少女。 アスカを過去にそんなイメージで見ていた。
そして脆くも崩れ去っていく彼女から青年は逃げていた。
なにより青年は好意を持っていた少女にも、同居していた女性も恐くて仕方がなかった。
現実がなんなのかわからなくなるぐらいまで追いつめられていた。
そんな時アスカを求めたのに、そんな青年をアスカは拒絶した。

何もかもが普通じゃなかったあの時

心に深い傷を負ったのはなにも青年だけではなかったのだ。
青年以上に深い傷を負った少女は今も悪夢から抜け出せない。
ならば自分がするべき事は何か?

青年にやれることはただ一つだけ 時間をかけてゆっくりと心を癒してあげる事 ただ一つだけ

「アスカ、好きだよ。愛してる」

アスカを優しく抱き寄せて髪を撫でる。
脆く崩れさりそうな女性を抱きしめながら青年は一筋の涙を流した。

「うそ・・・・」

「嘘じゃないよ」

「うそ・・・信じない」

「僕はアスカの事を好きなんだ。愛してる」

「いやぁ・・・・・嫌い・・・あんたなんかだいっきらい」

「それでも僕は構わない、それでも僕は・・・君を好きなんだ」

「ば・・・・・・かぁ・・・・・ぅぅぅぅぅ」

再び泣き始めたアスカ。
でも今度の涙は違う涙だった。
恐かった、寂しかった、悲しかった、あの過去に縛られた忌まわしい記憶から逃げる悲鳴の涙ではない。
やっと見つけたたった一つの安楽の場所。
ここだけが本当の自分の居場所だと感じるからこそ安心できる・・・・そんな涙。


「ねえ・・・・アスカ・・・・」

「なに・・よ」

「僕のこと・・・・・・」

「嫌いよ・・・・・・世界一大嫌いよ」

「・・・・・そう・・・・」

「そうよ・・・・・デリカシーもないし、カッコ良くないし、私の気持ちぜんぜん気付いてくれなかったし・・・」

「ごめん」

「だから嫌いよ・・・・」

「うん・・・・・・・それでも・・・・アスカのこと・・・・・・好きだ・・・から・・・・


青年は、静かに目を閉じ眠りの世界へと行ってしまう。
静かな寝息を確認するとアスカは青年の背中の方に回る。

青年の背中には無数の引っ掻き傷があった。
それはアスカが悪夢にうなされている間ずっと抱きしめていたから。
無意識に暴れ、しがみつくアスカは青年の背中に爪を立てて傷を作る。
それでも青年は愛する人を呪縛から解き放つため痛みに耐える。

そんな背中をアスカは指でなぞる。

−この人は受け入れてくれる−

この傷は自分の心の傷であり、青年の優しさの証だ。

「好き・・・・・世界で一番大好きよ シンジ」

まだ、面と向かって言えないけど私はこの人と一緒になれて幸せ

アスカは愛するシンジの背中にぴったりと寄り添って幸せそうに眠りについた。




<野上まことの言い訳という名の後書き>

初めまして、野上まこと と申します。
TENさんにはIRCでいつもお世話になっていましていつか投稿しますねと約束しました。
その結果、初めてアスカSSを書いたわけですけど・・・・どうでしょうか?
下手な文章で申し訳有りません。

もしよろしければ感想を頂ければ幸いです、でわ。



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