私を理解できる奴なんていない
私の苦しみを和らげてくれる奴なんていない
私は一人で生きていくんだと心に誓ったあの日
もう涙は捨てた
恐怖も悲しみもすべて沈めた
だから「私」がいるんだ
だから「私」でいられるんだ
「私」を理解できない奴なんかに・・・・・・
「私」を救うことが出来ない奴なんかに・・・・・
「私」の苦しみなんてわかるものか
他人なんかにわかるものか
 
 
 
 
 

− 拒絶 −
 
 
 
 
 

そうやって他人の顔色ばかり伺っている奴なんかに私は負けない
心が痛がっているから
私は負けるわけには行かない
だから私は他人なんていらない




 

 

心の疵は癒えない 僕はただ壊れてしまったアスカを抱きしめることしか出来ない
癒えない疵 痛む心 悲しみと絶望
僕はどうすればいいの?

ねぇ、父さん・・・・母さん・・・・・カヲル君・・・・綾波・・・・


『君が選んだ道なんだから』
『貴方は苦しくても、悲しくても選んだのでしょ?』
 

僕が出来ることなんていったいどれだけあるんだよぉ・・・

 

『君が抱いているその存在は君にとってなんだい?』
 
 
 
 
 
あんたは私を傷つけるだけの存在
だからあんたなんて嫌い
 
 
 
 
 
『それでも貴方は選んだの・・・・・貴方を憎むヒトを』
 

だって・・・会いたいと思ったんだ 希望もあった
でも・・・・でも・・・・アスカは・・・・僕が・・・・僕を・・・・ううううぅぅ

 

『それでも君は希望を選んだ』
『例え傷付き、傷付け合ったとしても貴方は彼女を必要としたのでしょ?』
『なら君が彼女を支えてやらないと』
 

僕には無理だよ・・・カヲル君・・・

『貴方は気付いた上で未来を選んだのよ』
 

そうだよ、綾波・・・だけど・・・・

 

『『なら、信じて・・・・私たちを・・・未来を・・・・貴方の大切な人を』』
 
 
 
 
 
 
でも私はあんたを憎む
 
 

 


あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アスカ・・・あすか・・・あすかぁ





 

 

腕の中で目を開いた少女に少年は涙を流し抱きしめる
今まで反応すらしなかった少女は確かに生きている
絶望と希望が入り交じる少年の心には確かに必要としていた少女の「生きる意志」を見いだした。

「憎んでくれてもいい、傷つけてくれても良い・・・・君さえ、君さえ生きていてくれれば」

不器用な少年の呟き
少年を憎むことでしか生を見いだせない少女
解け合い一つでいることを拒絶した事で得た報いの世界
疵は深く 罪と罰はふたりに残酷な現実を突きつけた









「疵   −罪と罰−」  プロローグ




 

 

それが何時なのかもう何もわからない
いったいアレからどれだけの時間がたつのか?


神の報いの時 − サードインパクト −


その中心にいて、そして人類すべての未来を選択した少年。
彼は「変わらない未来を歩んでいくこと」を選んだ。

閉塞する人類が出した答えは「継続」

例えどんなことが有ろうとも未来は自分たちで作っていくそう決めたのだった。
そして今、彼は罪と罰を得る。
望んだ世界の変わり果てた姿を見ながら。
望んだ存在の「拒絶」の言葉を聞きながら。

白い砂浜・・・・・・・第三新東京市近郊に位置する芦ノ湖。
少年が気が付いた時、希望と呼ばれた少女の幻が一瞬見えた。
寝かされていた体を起こし最初に目にした他人は赤い少女。
驚きと喜びが少年の心を満たしたが少女はただ、天を見ていただけだった。
呼びかけ、揺り動かしても答えない少女。

やがて突きつけられた現実が絶望変わった時、おもむろに少女馬乗りになり首を絞める。
しかし少年は少女の首を絞めきることが出来なかった。
望んだのだから・・・・他人を望んだのは他の誰でもない自分なのだから。
震える手は少女の首を捉えたまま・・・・永遠と思える時間。

少女に生を感じられなく、希望が絶望に変わった時、少女が力無く少年の頬に手を当てる。
手がゆっくりと頬を捉えた時、少年から嗚咽が漏れた。
少女の手の温もりと生を感じることが出来たから。
そこに小さな希望が見つかったから。
少年の涙は頬を伝い少女の頬に落ちる。
少女の手は力無く少年の頬を伝い砂浜に落ちた。

「くぅ・・・・・うううう・・・・・あぁぁぁぁ」

少年は項垂れたまま泣き続ける。
生きている、望んだ存在は生きている。
その嬉しさと、少女に対する後ろめたさが入り交じり泣き続ける。
ひたすら天を無表情に見ていた少女はギロリと瞳を少年に向ける。


「気持ち悪い」


拒絶の言葉と共に。


 

 

 

 

 

 



「野上まことの後書きという名の言い訳」

 

以前欠番として扱ってきた5作目を加筆・修正して公開することになりました。
初の連載作品である「疵 −罪と罰−」です。
この作品の目標は「呪縛・贖罪・癒し」「疵」を経てふたりの未来を書く事です。

EoEラストから始まるこの作品はハッピーエンドで終わるかどうかはお約束できません。
どういうラストを迎えるかはぼんやりと考えてますが、それがすべての読者様にとって「ハッピーエンド」なのかどうかは
わからないからです。

所謂「甘い」関係になることはたぶん無いと思います。
「呪縛・贖罪・癒し」「疵」を読んでいただければわかると思います。
野上にとって上記の作品は原点であり、boltさん、怪作さん、cradleさんの感想を糧にこの作品を書きました。

正直、これが万人受けしない気がして成りません。その気持ちが「欠番」にしていたのですが
TENさん、さんごさんのご厚意で掲載へと至りました。
応援してくださる方が居る限り書き続けたいと思います。
もしよろしければお付き合い下さい。

碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーの「未来」へと綴られるこの物語に。



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