おまつり

Write by Y-MICK





「へぇ〜〜・・・・ふぅ〜〜ん・・・・」


学校の帰り道である。

その証拠に、制服を着ている。

彼女−−惣流アスカ−−は変なところで立ち止まっていた。

変なところと言っても怪しいところではない。

普段では立ち止まらないような場所、町内会の掲示板の所である。


「これは・・・・・・”お兄ちゃん”と行くしかないわね!」


アスカが見ている物。

掲示物の中でも特に目立っている物。

それにはこう書いてあった。




「夏祭り」




と。

















「お兄ちゃんっ!居る?」


アスカは帰ってくるなり玄関のドアを開け、自分の部屋に駆け込む・・・・のではなく、

隣の家、マンションなので部屋という方が正しいかもしれないが、ともかく隣の部屋にいる目的の人物を

有無を言わさず問いかけてきた。

もちろん、他の人はお構いなしである。


「ん〜〜・・・・おや、アスカ君。どうした?」

「んもぅ。いい加減アタシを呼び捨てにしてって言っているでしょ?」

「はははは・・・・仕方ないだろ?もうこっちになれてしまったんだから」

「もぅ・・・・お兄ちゃんったら・・・・」


いい加減説明せねばなるまい。

アスカが「お兄ちゃん」と言っている人間。

彼の名は碇シンジという。

現在大学3年生。

二十歳であり、アスカより3才年上である。


アスカがこの待ちに引っ越してきてすでに10ヶ月。

偶然も必然もあるのだろうか、アスカは彼、シンジを一発で気に入った。

いわゆる「一目惚れ」と言う奴である。

間違っても米の名称ではない・・・・


ま、それはおいといて、この10ヶ月、アスカはシンジの元を離れることはなかったと言っていいくらい、

べったりとくっついていた。

今回も、その延長にすぎない。


「でさぁ、お兄ちゃん?」

「なんだい?」

「今日の夜、神社でお祭りがあるの、知ってる?」

「もちろん。僕は一応この町で育ったからね。一応顔くらいだそうと思っているよ」

「でで、アタシも連れてって!」

「やっぱりね。そう来ると思ったよ。うん、行こうか、一緒に」

「やったぁ。お兄ちゃんと一緒に行けるなんて、嬉しいなぁ」

「大げさだね。ところでアスカ君は浴衣、着ていくの?」

「浴衣?それって・・・何?」

「そうか、ドイツ帰りだから知らないかもしれないね。浴衣って言うのは・・・ま、見た方が良いと思うよ」

「?」

「叔母さんに聞いてみると良いよ。もしかするとアスカに合う浴衣を用意しているかもしれないし」

「ホント?!じゃあアタシ、来てみる。6時くらいに来るからね。お兄ちゃんも準備していてよ!」

「分かっているよ」

「じゃ、またあとでねぇ」


アスカは駆け足勇んで自分の部屋に駆け込む。

その様子を、シンジは見て、


「元気だなぁ・・・アスカ君。よっぽど嬉しいんだろうなぁ・・・・」


妙にのほほんとしていた。

















ぴ〜〜ひゃらら〜〜・・・・どんどん・・・どどん、どん


祭りというのは大抵何処も同じ様な形式になるのであろうか。

ともかく、神社の境内に現れた二人

シンジは青色を基調とした浴衣を着、袖に腕を通して組んでいる。

妙に様になっている気がする。

アスカの方は赤色を基調とした浴衣。

少々派手なようなきもするが、似合っているのは赤色が彼女の色だからだろう。


「へぇ〜〜・・・これが『夏祭り』ね」

「そう」

「ねぇ、お兄ちゃん。早速あれ、やってみたい!」


アスカが指さしているのは『金魚すくい』。定番である。


「アスカ、やる前にすることがあるよ。ここの神社にお参りしないとね」

「?・・・どうして?」

「一応、それが礼儀だよ」

「ふ〜ん・・・ま、良いわ。アタシはお兄ちゃんについて行くから」

「じゃ、行こうか」

「うんっ!」


シンジは意図せずにアスカの手を引く形を取る。

シンジは気づいていないが、アスカの顔には赤みがさしていた。








がらがらがらがら・・・・ぱんぱん


鐘を鳴らし、柏手を打つ。

アスカはやり方を知らなかったので、シンジの真似をする形になった。

シンジは次に手を合わせ、わずかに頭を垂れた。

アスカも同じように、手を合わせ、わずかに頭を垂れる。


「(・・・・・・・いつまでも・・・・続いて欲しい・・・・)」

「(お兄ちゃん・・・・シンジお兄ちゃんと・・・・ずっと一緒にいたい・・・・・)」


二人はこのような願いをする。

叶おうが、、叶うまいが、願うことは重要である。

神社はその儀式を行う場所ではないだろうか。


「さぁ、出店に行こうか」

「うんっ!」


再び意図せずにアスカの手を取るシンジ。

またもアスカの顔は紅くなる。








「へぇ、これが金魚すくいね」

「そう。これで金魚をすくうんだ」

「でもこれじゃあすくえないわ。紙だもの」

「そう。これはそう言うゲームだよ。いかに上手くそれを使ってすくうか、と言うゲームなんだ」

「へぇ・・・・じゃあやってみよ」

「うん。おじさん、この娘に一回ね」

「はいよ」


アスカは真剣な表情になり、水面下の金魚を凝視する。

やはりアスカでもすくいづらいことは分かっていた。


「・・・・・・えいっ!」


ぱりっ・・・・・ぱしゃん


「残念だったね、お嬢ちゃん」

「おにいちゃぁ〜〜ん・・・」

「はははっ。初めはそう言う物なんだよ。事実僕もあまり得意じゃないしね」

「お兄さん、彼女にとってあげられないのかい?」

「えぇ。あまり得意ではなくて・・・・」

「そうかい。なら・・・・ほら、サービスだ」


金魚屋のおっさんは一匹をアスカに差し出す。


「わぁ・・・・アリガト、おじさん」

「いいよ、いいよ」


袋に入っている金魚を見て嬉しそうな顔をするアスカ。

それを見ているシンジの方もいささか嬉しそうな顔をする。


「ね、お兄ちゃん。次いこ、次」

「あぁ、良いよ」


二人は次の出店へと向かう。


「えーっと・・・・・これ、何?」

「綿菓子。食べてみると良いよ」

「へぇ、これ、食べれるんだ・・・・一つちょーだい」

「いらっしゃい。ほい、ありがとさん」

「うわぁ・・・・ふわふわぁ・・・・」


割り箸に巻き付けられた綿菓子を見てまた嬉しそうな顔をするアスカ。


「ふわふわだぁ・・・・」


それをちぎって口に入れると、彼女にとって初めての味が広がっていく。

本来、砂糖だけの味のはずだが、彼女にとっては違う味になるのだろう。


「おいし〜〜」


シンジの方も安堵の顔を見せ、次の出店へと向かう。

夏祭りはこれが面白いのだろう。








「・・・・・・・・っ!!」


ぱこんっ!


「あたりぃ〜〜・・・ほい、兄ちゃん。景品だ」

「ふぅ。良かった」

「わぁ・・・お兄ちゃん、格好いい・・・・・・」


シンジ達は射的場に来る。

そこでシンジはアスカにせがまれ、やむおえず射的をする羽目になった。

先の2発は惜しい所で外れ。

最後の一発でアスカが所望していた「サルのぬいぐるみ」を射た。


「ほら、欲しがっていた物だよ」

「ありがと、お兄ちゃん」


上目遣いでシンジを見、頬を染めるアスカ。

シンジもその笑顔に答えていた。

















「はぁぁぁ・・・ほぉっ!ふんっ!」


どぉんっ!どんっ!どんどんどんっ!!


「・・・・・やるな、碇」


てんてん・・・・てけてんてんてん・・・・


「♪〜♪♪〜〜♪♪♪♪〜♪」


♪♪♪〜♪♪♪〜〜♪♪♪〜〜♪〜〜♪♪♪♪〜〜♪♪♪♪♪♪〜〜♪


おなじみの物。

そして夏祭りには欠かせない物がある。

その場所までシンジとアスカはやってきたところで、絶句していた。


「ふんっ!ふんっ!ふんっっっ!!」


どんっどんっどんっどんどんどんどんっっっ!!


「ふぅぅぅ・・・・・久しぶりにたたいたな・・・・・」

「流石だな、碇。昔取った杵柄は錆びてはいなかったか」

「当然だ」

「あなた、格好良かったわよぉ」

「・・・・止せ、ユイ」

「ま、照れちゃって・・・可愛いんだから」

「ユイ・・・・」

「冬月先生も格好良かったですわよ。渋かったですわ」

「そう言うユイ君こそ良い音色を出す。なかなか出来る物ではないよ」

「ま、冬月先生ったら」

「ユイ、そろそろ次の会場へ行くぞ。あと2件残っている」

「はぁい。今行くわ、あなた」


彼らが見た物・・・それは、

ばちを体中を使って振り回し、勢いよく大太鼓にたたきつけるゲンドウと、

鼓を軽快にたたく冬月。

綺麗な音色を出し、ゲンドウの太鼓に合わせる和笛をならすユイ。

と言った面々のいわば「ショー」であった。


閑話休題。

















「ここは?」

「僕が知っている限り、この町で一番綺麗な場所。そして時間」

「お兄ちゃん?」

「ほらアスカ君。見てごらん?」


シンジが指さした方向には小川。

そして微かにそのせせらぎが聞こえると行った場所。

アスカが見渡すと、そこには・・・・


「本で読んだことがある・・・・これが蛍なんだね」

「そう。セカンドインパクトで歪んだ生態系が戻ってきた証拠・・・だよ」

「へぇ・・・・綺麗だね、お兄ちゃん」


辺りには夕闇にとけ込んでいる蛍の光。

これが、幻想的と言うべき物なのだろう。


「綺麗だね。お兄ちゃん」

「うん。これだけは・・・アスカ君に見せたくてね」

「へぇ・・・・・」


時間がどんどん過ぎていく。

時がたつのを忘れるくらい、二人はこの幻想的な雰囲気に酔っていた。

















「今日はアリガトね、お兄ちゃん」

「これくらいはどうってこと無いよ」

「でも・・・アリガト。これはお礼だよ」


チュッ!


「じゃ・・・・おやすみっ!」


しばし呆然とするシンジ。

唇にキスをされたのだからそれも仕方ない。

しかもシンジにとってはファーストキスを。

もちろん、アスカにとっても同じだった。


「・・・・参ったな」


これがシンジの率直な感想であった。








「お兄ちゃん・・・・・・・でへへへっっっ!!」


アスカはと言うと、枕を抱えて転がりまくっていた。




この二人にとっては、こういう物かもしれない。



あとがき



・・・・・・・ベッタベタ。 m(_ _)m



ベタすぎますな。



ともあれ、夏・・・とゆー事で書いたもんです。

ちなみに、この祭りのサンプル(笑)は、私が小さかった頃、実際に行っていた”秋”祭りを参考にしています(笑)

何か間違いとかあっても受け付けませんので(ぉ



それと・・・・蛍のシーンでキスシーンを期待した人は多数いるでしょう。

ちょっと意地悪しちゃいました(爆)

勘弁して下さい。

これもあまりにもベタ何で、やめました(爆)



とりあえず今回はこんな所です。

何かありましたらY-MICKまでお願いします。



それでは。


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