今日も今日とてコンフォート17。
ここには血に飢えた1匹の雄が生息している。
しかも、同所にはうら若き少女も暮らしているらしい。
「ア、アスカぁ・・・・・もう我慢できないんだ・・・・」
シンジが目をギラつかせながらアスカににじり寄る。
寄られるアスカの方はというと・・・・
「んもう・・・・ちょっとは我慢しなさいよね♪」
鼻歌混じりで言ってみても抑制効果があるわけも無し。
「じゃ、いくよ」
シンジがつばを飲み込む。
「しょーがないわねぇ・・・・」
満更でもなさそうにしながらアスカが目を閉じる。
シンジはアスカの背後からそっと手を伸ばして彼女の体を掴む・・・・・
「・・・・いただきます・・・・」
「召し上がれ♪」
かぷっ!
ちゅうううううううううううううう・・・・・・・・・
アスカの首もと、そこに異常に発達している犬歯を突き立てるシンジ。
そう!
彼は洒落抜きで”血に飢えていた”のだった!
第3新東京市における吸血生物
「シンジ!アンタ吸いすぎよ!!・・・・お陰でフラフラするじゃない!」
学校への登校途中。
朝日が黄色く見えるというのは良く聞く言葉だが、アスカは別の意味で太陽が黄色く見えていた。
「ご、ごめん・・・・」
アスカの3歩後ろをとぼとぼと歩くシンジ。
「まったく・・・何回言っても聞かないんだから・・・」
「ご、ごめん・・・・でも、アスカのって・・・・すごく美味しいから・・・・我慢できないんだ」
なんかヘンな言い回しだが、なんとなく嬉しくなってしまうアスカ。
だが、サッと顔を引き締める。
「シンジぃ・・・・アタシがいないときに喉が渇いたらどうしてるのよ?」
シンジはキョトンとして。
「え?・・・我慢するけど?・・・・大変だけどね」
眩しいほどの笑顔でこんな事を言われたら血を吸われる者としては至福だろう。
どんな至福かはよくわからないが。
現に、アスカは少し頬を染めて、恥ずかしいからかそっぽを向いてしまう。
「あ、いっけない!急がないと遅刻だよ!」
感慨にふける余裕も与えてもらえず、走り出すハメになる。
「ったくぅ・・・元はと言えばアンタがいつまでもちゅーちゅー吸ってるから・・・・」
「だからゴメンってば・・・・・」
結局、学校に到着するまでこんなやりとりが続いたりする。
まあ、日課に近いモノなのだが。
アタシとシンジは幼なじみ。
ちっちゃい頃は、シンジが・・・・その・・・・なんて言えばいいのかな・・・・
ほら!吸血鬼ってガラじゃないでしょ?アイツ。
それを知ったのは中学に上がってすぐの頃。
シンジのお母さん、ユイおばさまに教えられた。
シンジはいわゆるオカルトチックなヴァンパイアではなく、世界的に見ても例のない奇病の結果だそうだ。
それによると、シンジは他人 近親者以外の血液を摂取することで精神の均衡を取っているらしい。
長期間血液を吸えないときは・・・・最悪の場合、発狂することもあり得る、と。
輸血用血液で補給するという手もあるにはある。
でも、頻繁に消費されるそれを全部輸血用だけで補うことはムリ。
だからユイおばさまは真剣な顔でアタシに尋ねた。
「アスカちゃん、シンジのことどう思ってる?」
「へ?」
「一生引っ張っていける?」
「そそそそそ、そんなこと!・・・・あんなボケボケっとしたヤツ!」
アタシの悪い癖。
表情とは正反対のセルフがぽんぽん出てくること。
でも、付き合いが長いおばさまは読みとってくれた。
「これはいつもの冗談じゃないの・・・・シンジの命がかかってるの」
「え?・・・・・」
そこでシンジの奇病とそれを抑える手段を聞かされた。
「そんなことって・・・・」
「事実なの。今までは知り合いから内密に輸血用の血液を手に入れてたんだけど・・・・」
「それでいいじゃないですか。ムリして人の血を吸わなくても・・・・」
「アスカちゃん。関西で大きな地震が起きたのは知ってるわね?」
「ええ・・・そりゃもう・・・かなりの被害らしいですね」
アタシはちょっと虚を突かれた。
シンジの奇病と地震に何の関係があるんだろう?
「向こうでは死者がかなり出たの・・・・死者の倍くらいの重軽傷者と共にね」
「あ!」
アタシは気付いた。
「そうなの・・・・今は全国から関西に向けてありとあらゆる医療品が急送されている最中・・・・もちろん輸血用血液もね」
「・・・・・・」
「今まで入手をお願いしてた知り合いも、もうこっちに回せるほど余分な血液は関東・・・・いえ、日本全国探しても見あたらないって言うの」
そこまで一気に語ると、ユイおばさまはうっすらと涙を浮かべた。
「・・・・・・」
「ごめんなさい・・・・無茶なお願いだっていうのはわかってるの・・・・わかってるの・・・・だけど・・・・」
親として当然。
子供を見殺しにするようなヤツは親と呼べない。
そんな資格すらない。
ユイおばさまはここまで八方手を尽くしたんだと思う。
でも・・・・アタシのこれからの人生を売るのなら、やっぱり値段は高くつけなきゃね。
「おばさま・・・・心配しないで下さい・・・・これからはアタシが、シンジの糧になりますから」
「アスカちゃん・・・・」
「ただし!」
今までの重い空気を振り払う、明るい声を出す。
「?」
「シンジをアタシに下さい!」
普通、親なら躊躇するわよねぇ、こーゆー場合は。
ところがどっこい。
「売った!!」
間髪入れずに、人差し指でビシッとアタシを指して叫ぶんだモン。
アタシの方がびっくりしたわ。
ま、そんなわけでぇ・・・・シンジはアタシの”モノ”になったってわけ。
別になにか特別なコトさせてるわけじゃないけどね。
ただ、シンジがアタシの家に居候するようになっただけ。
ウチの親はドイツに長期出張中だから、形だけ見れば同棲みたいなものかな♪
あ、シンジが帰ってきた。
週番だから少し遅くなるはずだけど・・・意外と早かったわね。
ひょっとして・・・・
僕は息を切らせて玄関に飛び込んだ。
もう限界だ。
血が欲しい。
熱い血が欲しい。
血を飲まないと・・・・
飲まないと・・・・
多分、今の僕は目をギラつかせてるんだと思う。
前にアスカに聞いたら、僕が欲しくなってるときには一目で分かるんだって。
なんでも目が飢えた狼そのものなんだって。
あ・・・リビングでアスカが寝転がってる。
顔だけはこっちに向けてニヤニヤ意地悪く笑ってる。
「どしたのシンジ?おなかでも痛いの?」
わかってるクセに聞くんだ。
僕は何も答えずにアスカのそばまで寄ると、いきなり覆い被さる。
「んあん♪」
楽しそうな声をあげてアスカは身をよじる。
みえみえの抵抗。
僕はそんなことお構いなしにアスカの頭を掴むと、強引に唇を重ねる。
以前僕を診察した偉いお医者さんは・・・・”キミの発作は性欲をともなうこともあるだろう”なんて言ってたけど。
”こともあるだろう”じゃなくて、そればっかりだもん。
僕の舌はアスカの口腔を蹂躙し、アスカの舌は僕の”牙”を舐める。
僕は抜き差ししていた舌を引き抜いて頬を、うなじを、首筋を”舐めて”いく。
「んああぁぁ・・・・シ、シンジぃ・・・早くぅ・・・」
アスカに体重を掛けるようにしてのしかかり、首筋・・・そこにある二つの傷に口付けする。
「あふぅ・・・・」
この傷はアスカの傷だけど、僕の傷。
そして僕とアスカを繋ぐ絆。
病気のお陰で異常発達してしまった犬歯を突き立てる前に、僕はその傷を舌で舐める。
「はああぁぁ・・・・」
アスカが甘い息と共に喘ぎ声を出す。
以前聞いたら、僕が吸うようになってから、この傷口が”感じる”んだそうだ。
そして僕は牙そのものに見える犬歯で首筋をツゥーっとなぞる。
「ひゃぁ!!」
なんでも、これがまた結構感じるらしい。
「シンジ・・・もうだめ・・・早く」
「ん・・・・じゃ、いくよ」
僕はゆっくりと犬歯を傷跡に押し当てて、段々とそこに力を込める。
「ふああっ!」
やがて、皮膚が破れて血が滲み出す。
それでも牙の進みは止めない。
「んあっ!・・・・あぐっ!・・・・あふううっ!!」
アスカがじたばたもがこうとしてるけど、僕はそれを押さえつける。
だって、危ないじゃない。
あ、アスカは痛がってじたばたしてるんじゃないからね?
アスカ曰く。
「シンジのがアタシの中に入ってくるだけで・・・・イッちゃうんだもん」
なんだって。
だから
僕は
牙を
突き立てる。
「だめぇ!・・・・イッちゃう!イッちゃうよおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
「シンジ?」
「なに?」
「他のヤツの血、吸うんじゃないわよ・・・・」
「うーん・・・・でもどうしようもないときは・・・・・」
「アタシが!・・・・アタシがいつもそばにいるから・・・」
「わかってる」
「え?」
「僕はアスカのものだしね・・・・それに・・・」
「それに?」
「僕はアスカ無しじゃ”生きられない”んだからね」
「・・・・バカ・・・・」
Innocent vampirre in the TOKYO−3rd・・・・・・・・
大部分の皆様初めまして。
そうでない方こんにちは。
P−31です。
・・・・またもやこっぱずかしいモノが出来上がってしまいました(笑)
「何か書け!」という某さんご様の脅迫により作成しました(爆)
作中の病気等の描写は全て”デタラメ”です。
あんまりツッコまんといてください(笑)
いつもとは作風を変えたつもりなんですが・・・・
出来上がってみると、いつもと変わらないような気がするのは私だけでしょうか?(笑)
よく考えたら(考えなくてもそーだが)短いっすね。
最近の作りもんで20Kを超えないのは珍しい。
ま、依頼はショートショートっていうことらしかったけんども(笑)
こんなんでましたけど・・・・さんごさん、これでええ?(笑)
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