黄昏時
遠くで蝉が鳴いている。
シワシワと、大きな音を立てて。
近くでサンダルの地面に擦れる音。
カラカラと、一つの和になって。
ふと見上げた空には、今や遠く山の端に隠れた太陽と、それが織りなす光と闇のグラデーション。夕日と空のコントラスト。
空の、薄暗くなりつつある青に、浮かぶ雲の陽を浴びたオレンジ。
雲の複雑な隆起に、光が影を作り出して、まるで聖堂の壁画のよう。
すり抜けていく風は、昼間の熱気を西の彼方に置いてきて、僕たちの肌に、心地よい涼を運んでくる。
右手には買い物袋。
心地よい昼寝のおかげで、こんな時間になってしまった買い物帰り。
左手には一つの温もり。
「一人で待ってるなんてつまらない」と言って付いてきた、女の子の手。
彼女も僕と一緒になって、夕暮れの空を眺めている。
残光に照らされる彼女の顔は、とても穏やかで、そんな彼女の顔を見るだけで僕の心は温かさに包まれていく。
「シンジぃ・・・・・・」
彼女の呟きに、僕が応えたら、彼女は僕を振り返って、
僕の顔を見つめてきて・・・
「ふふっ」って笑って
「夕焼け、綺麗だね」
って笑って見せた。
「うん、そうだね」
僕もそれに笑って応えた。
「たまにはいいもんねぇ、こんな時間に歩くのも」
「うん、そうだね」
カラカラと響くサンダルの音。
虫達の鳴く声は、だんだん静かになっていって、
僕たちが部屋に辿り着いたときには、
辺りはすっかり暗くなっていた。
「すぐに夕飯作るからね」
「こーのアスカ様を待たせたんだから、美味しい物作らないと許さないわよ」
「はいはい、分かってますよ」
夕食はこれからだ。
終
<あとがき>
ども、自分のHPには久しぶりのUPとなってしまいました。
今回は、今まで以上に情景にこだわってみました。本文書くよりバックイメージ探す方に手間取ったくらいで(爆)
私、結構夕方の空って好きなんですよねぇ。あの、なんというか、自然の雄大さとでもいうのか、とにかく美しいと思います。
自分の体験してみたいことをアスカとシンジにやらせてるってのは、某L.A.S.のさんごさんと同じですね(笑)
08/30/1998
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