【構成無茶苦茶妄想意味無し小説】
つよいぞ!シンジ君!! 嵐の登校編
いつもと変わらぬ葛城家の朝。シンジが朝食の準備をしている。
「ふぁ〜、おはようシンジ・・・」
まだ完全に目の醒めてないアスカが目を擦りながらリビングに現れる。
「ん、おはよう、アスカ。お風呂沸いてるから。っと」
料理をしつつ返事を返すシンジ。どうやら大事な所のようだ。
しかし、アスカは不満なのか、トコトコとシンジのほうに歩きだし、ちょこんとシンジの背中に頬をすりよせる。
「もう・・・ちゃんとアタシの顔を見て言ってよ」
「アスカ・・・・・」
シンジは料理の手を休め、ゆっくり振り返る。
そしてそっと抱きしめ、アスカの目を見つめて口を開く。
「おはよう、アスカ。お風呂沸いてるから・・・」
「・・・うん・・・よろしい・・・」
アスカは満足げに微笑み、自分の頬をシンジの頬に預ける。そのまま二人にとって永遠とも思える数分が経つ。
だがこのままでいる訳にはいかない。アスカは名残惜しそうに顔を離した。
「・・・お風呂入ってくるね。ご飯冷めちゃうから・・・」
「・・・うん・・・待ってるから・・・」
そしてアスカは風呂に、シンジは料理の続きを始める。すると。
「ふあぁ〜あ、おはようシンちゃん」
豪快に頭をバリバリ掻きむしりながら、この家の主が現れる。
「あっ、ミサトさん。おはようございます」
ミサトは当たり前のように冷蔵庫に向かいビールを取り出し、一気に飲み始めた。
「ぷぅっっはあぁぁぁ〜!!っかあぁぁ〜!!!っきっっくぅぅぅ〜!!」
其即ち、酔いどれ天使の再起動である。
もはや当たり前の光景だが呆れるシンジ。
「全く、朝からお酒なんて。不健康ですよ」
シンジは無駄だと思いつつ、出来上がった朝食の品をテーブルに置きながら言う。
「へ?い〜のい〜の。私の肝臓、鉄だから。あっははは〜♪」
確かにミサトの肝臓なら有り得るかも、と真剣に思うシンジであった。
しばらくすると、アスカが風呂から上がってくる。
「あ〜、いいお湯だった〜。あれ、ミサト起きてるの?
めっずらしいわねぇ〜。サードインパクトでも起きるんじゃない?」
「おっはよう、アスカ。って、失礼ねぇ〜私だって早起きするわよ、たまには」
「本当に『たまには』ですよね」
「もぉ〜、シンちゃんまで。ぶうぅ〜」
シンジの絶妙なタイミングのツッコミに、頬を膨らませて子供のように拗ねるミサト。
堪えきれなくなったシンジとアスカの笑い声が響く。
いつもの葛城家の風景だ。
こんな調子で朝食も済み、各々出かける準備をする。
シンジは朝起きた時に制服に着替えているので鞄を持つだけで済む。
だが、気が強いと言っても、アスカもやはり女の子である。
んなもんで、時間が掛かる。自分を綺麗に見せる為に。
今迄は大勢の人間に見せつける為に。しかし今は違う。唯一人の為に。
世界でたった一人しか存在しない《碇シンジ》という同い年の少年の為に。
シンジは待っていた。今までの彼ならブツブツと文句を言っていただろう。
しかし今の彼は、ペンペンと戯れながら、ただのんびりと待っていた。
あの事件が彼を変えた。(前回参照)
(アスカは女の子だから、綺麗に見せたいんだろうなぁ)
少しは女心と言うものが解ってきたシンジではあるが、「全てシンジの為」と言う事に気付くほどではない。まあ、これがシンジといえばシンジなのだが。
待つこと数分、自室の襖を開けアスカが現れた。
「シンジ、おまたせ」
「ん、じゃあ行こうか」
「うんっ!」
「「じゃあミサト(さん)、いってきまーす」」
酔いどれ天使は午後出勤なのか、まだビールをかっくらってる。
(ゴクッゴクッ)「いってらっさぁーい」(ゴクッゴクッゴクッ)
そして学校に向かう2人。
「全く、ミサトにも困ったもんね。朝っぱらから酒飲んで」
「ハハ。まあ、いつもの事とはいえ、ちょっとね」
「どっちが保護者か分からないわよ、ホント」
のんびりと歩きながら、他愛ない会話を交わす穏やかな時間だったのだが。
「あっ!!!」
シンジが突然声をあげる。アスカはその声に驚いてシンジに問い掛ける。
「なっ、なに?どうしたの?シンジ」
「・・・・・お弁当忘れた・・・・・」
「なぁ〜んだ。お弁当忘れ・・・って、えぇ〜っ!!忘れたのぉ〜!!」
アスカにとってシンジの弁当はなくてはならないものだった。
学校=弁当、弁当=学校、と言う図式が成り立つ位だった。
無論シンジもそれを知っているし、何よりアスカに自分の作った弁当を食べて欲しいという思いがあった。
「アスカ、先に行ってて。取りに行ってくるから」
「まだ時間あるわ。ゆっくり歩いてるから、早く来なさいよ」
「うん。すぐ追いつくから」
そう言って駆け足で戻るシンジ。
少しシンジの背中を見つめ、学校に向かうアスカ。
(全くドジなんだから・・・フフッ)
そんな事を思いながら歩いていると自分の前に立ち塞がるものに気付く。
男A「へぇ〜、お前が惣流・アスカ・ラングレーか」
男B「噂どうり良い女じゃねぇか」
二人組みの17、8の男がアスカを見ながら話し掛けてくる。
「なっ、何よ!あんた達。用が無いならどきなさいよ!!」
二人はニヤニヤと卑らしい笑いをしている。
男A「そんなこと言わずに付き合えよ」
男B「そうだぜ。怪我したくないだろ?大人しくこっち来いよ」
強引にアスカの腕を掴み、脇道に引き込む。
「いっ、痛!!あんた達、アタシはネルフの関係者よ!!
こんな事して只で済むと思ってるの!?」
男A「はんっ!お前が何も言えないようにしちまえばいいんだよ」
男B「まだ自分の立場を分かってねぇみたいだな」
ネルフの名に怯む事無く、さっきよりも卑らしい笑いで顔を歪めている。
アスカも助けを求めるが、ここは人通りがない。
ネルフの諜報部といえば、以前アスカが「登校くらい普通にさせて」とミサトに頼み受理されたのでここにはいない。アスカは恐怖に震えている。
(もうだめなの?・・・)
自分に問い掛けるようにアスカは絶望しかける。
(嫌っ!!絶対に嫌っ!!こんな奴等に汚されるなんて絶対に嫌!!!!
アタシの初めてはシンジのものなんだから!!!)
シンジの事を思うと、恐怖や絶望が消え、希望を持てる。
アスカは自分でも不思議だな、と場違いにも思っていた。
「いやっ!いやっ!!いやぁっー!!!」
もうこれ以上出ないという程大声を上げる。誰かに聞こえるように、と。
男A「うるせぇ!!」
バシッ!!!
男の平手がアスカの頬を打つ。
男A「これ以上手間掛けさせるんじゃねぇ」
男B「大人しくしてろよ。可愛がってやるぜ」
二人掛かりで壁に押さえつけられる。
「いやぁぁぁぁぁぁー!!!」
「アスカっ!!」
そこに居たのは肩で息をしているシンジだった。
「シンジぃ!!!」
アスカの蒼い瞳から涙がこぼれる。
シンジは赤くなったアスカの頬を見て眉をしかめた。
男A「なんだぁ?てめぇ」
男B「怪我したくなけりゃぁとっとと消えな!」
最初は脅えた二人だがシンジを見るなり(こいつなら)と強気になっていた。
「アスカを離して下さい」
男A「口で言っても分からねぇみたいだな。・・・おい」
男Bが頷くとシンジに向かい飛び掛かってきた。
「シンジ!!」
シンジは向かって来た男Bをかわす、と同時に膝を出す。
ちょうどカウンターで男Bの鳩尾に膝が入る。
男B「っ!!!!????」
そして、くの字になった男Bの背中に躊躇無く肘を思いきり振り落とす。
男Bは声も出せずに崩れ落ちる。
シンジは一瞬悲しげな顔になるが、すぐに表情を戻す。
「アスカを離して下さい。今なら警察にもネルフにも黙ってますから」
男A「うるせぇ!!ぶっ殺すぞ!!」
「話しても無駄のようですね」
男Aはシンジに気を取られていた。
そしてアスカの腕を掴んでいた手が弛む。
アスカはその瞬間を逃さずに男の手を振り払う。
男A「うっ!・・・クソガキがぁ・・・調子に乗るなよ・・・」
アスカはすぐにシンジに飛びつく。
シンジも強く抱きしめる。
「もう大丈夫だから・・・」
「うぅシンジぃ・・・怖かったよぅ・・・ひんっ」
「アスカ、少し離れてて。それとミサトさんに電話して、ここに来て貰って。」
「・・・ぐすっ・・・うん・・・分かった」
アスカはシンジの指示通りに、バッグから携帯を取り出しミサトに連絡する。
「・・・あ・・・ミサト?・・・うん・・・実は・・・」
シンジはそれを見て少し安心し、男Aを睨みつける。
「アスカを叩いたのはあなたですか?」
男A「それがどうした。男Bをヤったからっていい気になるなよ」
男Aはシンジをナメていた。
はっきり言って今のシンジは、めっちゃ強い。
見た目は変わらぬが再構成で得た運動能力、反射神経。
ネルフで教えられた格闘術、そしてその知識。
あの伝説のレスラー、ブルーザー・ブロディより強いだろう。
男A「おらぁ!!」
そんな事は知らない男はシンジを殴るために拳を振り上げた。
だが、シンジは瞬きもせずに綺麗に横に避ける。
同時に肝臓めがけて拳を放ち、男Aのがら空きになった脇腹に回し蹴りを食らわす。
それで終わりであった。
倒れている男Aを悲しげに見ているシンジにアスカが声を掛ける。
「シンジ、御免ね。シンジは人を傷つける事したくない筈なのに・・・」
少年の事を良く知るからこそ、アスカはその心中を察していた。
「・・・ううん、そんなこと無いよ。
確かにそう思うけど、アスカを傷つけられて平気な顔してられないよ」
「シンジ・・・」
男A「・・・・うぅ・・・」
男B「・・・あ・・ぁ・・・」
どうやら目を醒ましたようだが、まだ自由に動けずに悶絶している。
そんな時、爆音が近づいて来るのに気付く。
ボルンボルンボルンボルンボルンバルルルーン!!!
砂煙と共に蒼いルノーが現れる。
それと共に、どこからか音楽の様なものが聞こえるのにシンジは気付く。
その答えはミサトの出現と共に明らかになる。
ルノーのドアが勢い良く開くと、溢れんばかりの大音量が全てを包み込む。
スタン・ハンセンのテーマ曲、『サンライズ』だっ!!
「ウィーーーーー」
ハンセンのポーズ(親指、人指し指、小指を立てその手を天に突き出す)をしているミサト。
なんだか恍惚としたイッちゃった顔をしている。
何故かテンガロンハットを被り、何故かぶっといロープを手に持っている。
そしてそのロープをバチンバチンと壁や地面に叩き付け始めた。
「ウィーーーーー」
ひどく興奮し、しかしどこか満足そうな顔をしているミサトに、シンジとアスカは恐怖のあまり声も出ない。
なぜか誰も居ない所に振り向いたかと思うとまた叫んだ。
「ウィーーーーー」
再びテキサス・ロングホーンが響きわたる。
何が気に入らないのか激しく暴れてロープを振り回す。
そしてハンセン・ミサトは、男A・Bの姿を見つけた。
すると狂ったように(いや、ホントに狂っているのであろう)男A・Bに襲い掛かる。
まず、男Bの腕を取り、ロープに振るように壁に向い走らせる。
ダッダッダッダッダッダ、バァァッン!(走って壁に激突する音)
ハンセン・ミサトがシンジとアスカの方に向き、左腕を上げ、右手で左腕を掴んだ。
「ウィーーーーー」
観客を煽るように、アスカとシンジに何かを要求する。
あまりの事に、つい「おおぉぉ」などと、わざとらしく棒読みにどよめく二人。
そして右手で左腕の力こぶを押さえながら、壁に激突したまま張り付けになっている男Bに向かい、モノゴッツ凄い勢いで走り出す。
「ウィーーーーー!!!」
バゴォグシャメキョッ!!!
物凄い音がした。出来ればあまり聞きたくないような音だ。
当たり前である。ハンセン・ミサトの凶悪なラリアットを壁に挟まれる格好で喰らったのだ。
シンジは、冗談抜きで『ミサトが人を殺した』と思った。
ハンセン・ミサトは満足そうに振り向いた。
「ウィーーーーー」
その姿はアスカ達に何かを訴えている。
まるで『見たか、一人仕留めたぞ』と言わんばかりである。
そして存分にアピールを終えると、ユラリと男Aの方に向かう。
男Aは恐怖に慄き、ガチガチと歯を鳴らせ、失禁している。
よほど恐ろしいのだろう。
シンジとアスカもこの時だけは男に同情したという。
ハンセン・ミサトはおもむろに右手で男Aの左手首を掴む。
そして力任せに思いきり自分の方に引き寄せる。
これが恋人同士なら、「愛してるよ」「私も」なんてシチュエーションだが、相手はハンセン・ミサトである。
「ウィ―――――!!!!」
雄叫びを上げ、左腕を思いっきり振りかぶり、男Aの喉元に叩き付ける。
男は飛んだ。冗談抜きで宙に舞った。
『いや、本当にびっくりしましたよ。まさか目の前で人が飛ぶのを見れるなんて・・・。
人間が飛んだの見たの、綾波以来ですよ』〔S・I談〕
『ホントホント。あの時ばかりは天才と呼ばれたアタシでさえ呆然としたわ。
だって飛んだのよ、人が。ホント驚いたわ』〔S・A・L談〕
その現場を目撃した二人は、後にこう語る事になる。
「ウィ―! ウィ――!!ウィ――――!!!!!」
暴れるだけ暴れてすっきりしたのか、ハンセン・ミサトは勝利のテキサス・ロングホーンを響かせてルノーに乗り込む。
シンジは「サンライズ」が頭出しされたのを聞き逃さなかった。
ボルンボルンボルンボルンボルンバルルルーン!!!
来た時と同じく、砂煙と共に去っていく。
それと同時にネルフの諜報部員達が現れ男A・Bを連れ去って行く。
ちなみに男A・Bはリツコの「実験室」に連れて行かれたらしい。(ニヤリ)
「・・・あれ・・・ミサトさん・・・だよね・・・」
「・・・だと・・・思う・・・」
しばらく呆然と立ち尽くしていた2人だが、思い出したようにシンジが口を開く。
「あぁっ――――!!学校!!!」
「えっ!?もうこんな時間!?完全に遅刻じゃない!!」
この騒動のおかげですっかり時間を忘れていた。
すでにHRが終わっている時間である。
「行こう!アスカ!」
しかしアスカは動かない。
「どうしたの?どこか痛いの?」
「ううん」
心配そうに顔をのぞき込んだシンジに顔を横に振り、手を差し伸べた。
「もうあんな思いしたくないの」
シンジはアスカの意図に気付き、しっかりとその手を握る。
「行こうか、アスカ。二時限目には間に合うよ」
「うんっ!!」
手を繋ぎ走り出す二人。
「もうお弁当忘れても取りに行かせないからねっ」
「えぇ〜。お昼どうするのさ」
「もっちろん、シンジのおごりよ。当ったり前じゃな〜い♪」
アスカの笑顔に、シンジも笑顔で答える。
完全に遅刻でありながらも、手を繋ぎ笑顔で走る二人であったとさ。
おしまい
後書という名のお詫び2002。
渕のアニキのバックドロップは効いた。
3年後にオレは死ぬかもしれない。
あれはジワリと効いてくる。
3年殺しだよ。
by ケンドー・カシン