古ぼけたアパートの一室―ミサトと加持が同棲していた部屋。
回っている扇風機。
「ねぇねぇ しょぉ?」
明るい感じで『おねだり』している女。

「またかぁ、今日は学校で友達と会うんじゃなかったっけ?」
おいおい、流石に打ち止めだぞ、俺は? といった口調の男。だが表情は嫌がってはいない。

「ん?あーリツコね。いいわよ。まだ時間あるしぃ」
「もう1週間だぞ。…ここでごろごろし始めて
「だんだんね。コツがつかめてきたの。だからぁーー。ねェ」
甘えた声を出す女と、それにしょうがないな、と思いながらも応える男。

「っっんっ……」
甘い声を上げる女。

「多分ねぇー。自分がここにいることを確認するために…こういうことするの」
それは後から思いついた理由。

「バッカみたい!ただ寂しい大人が慰めあってるだけじゃないの」

気障に触るといった感じなのか吐き捨てる少女。
傍観する少年。

「身体だけでも、必要とされてるものね」
否定も、また積極的な肯定もしない女。

「自分が求められる感じがして、嬉しいのよ」
そんなことは関係ない、女。

「イージーに自分にも価値があるんだって思えるものねぇ。それって」
心底呆れた表情の少女。

「これが…。こんなことしてるのがミサトさん?」
怪訝な表情を浮かべる少年。

「そうよォ。これもワタシ。お互いに溶け合う心がうつしだす。シンジくんの知らないワタシ。
  ホントのことは結構、痛みを伴うものよ。それに耐えないとね」
別に諭すでもなく。当たり前の事…”太陽は東から昇るのよ?”と言ってるかのような…


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットライト。 に照らされているのは――ゆっくりと揺れるブランコ。

むすんでひらいて……幼稚園の光景。

「そうだ…。チェロを始めたときと同じだ。ここに来たら…何かあると思ってた…」

「シンジくんもやりなよ!」
「頑張って完成させようよ、お城」
「…うん!」
小さかった僕は誘われたことが嬉しかった。

追加される二つのスポットライト。隣に居たのは幼稚園の友達じゃなくて、人形に変わっていた。

「あ!ママだ」
「帰らなきゃぁ!じゃあねぇー!」

木製の舞台の上にあるパイプ椅子に座っている女性。
誰も座っていないパイプ椅子が四つ。

「ママーーー」
子供が母親に駆け寄っていく。嬉しそうに。

小さい僕の手が止まる。その子をじっと見てる。遠くでカラスの鳴き声。
泣きたくなった。でも、涙は出なかった。

また一人で、誰も居ない砂場でお城を作って、蹴飛ばして壊した。

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃぁ――もぉ――っ アンタ見てると…いらいらすんのよぉっ」 
「自分みたいで?」
裸で重なっているような二人。アタシとシンジ。

 

でもこれは夢。

だってアタシはまだシンジと一つになったことはない。

 
「ねぇキスしようか?」
ほら、アタシからきっかけつくってあげるから。

アスカ:「それとも怖い?」
ほら、アタシの挑発に乗ってよ、そしてアタシと同じって証明してよ。

「じゃあ、いくわよ
バカ、結局アタシからしてんじゃない…

 

 

 

 

 

 

 

そこはアスカが育った家。 初めて二人で旅行にいった場所。

アスカはテーブルに突っ伏している。

シンジは彼女の後ろに立っている。

 

「何か役に立ちたいんだ。ずっと一緒にいたいんだ」
懇願するようなシンジ。

「じゃあ、何もしないで。もうそばに来ないで。あんた私を傷つけるだけだもの」
アスカはシンジを睨みつけ、そしてシンジに詰め寄っていく。シンジは後ずさりする。

「アスカ助けてよ…… ねぇ、アスカじゃなきゃダメなんだ」
「嘘ね」

犬のように縋り付くシンジの太股を蹴り飛ばすアスカ。

「あんた… 誰でもいいんでしょ。ミサトもファーストも怖いから。お父さんもお母さんも怖いから。私に逃げてるだけじゃないの」
「助けてよ」
                  .  . .
嫌悪の表情のアスカと、何故か笑っているシンジ。

「そのくせ、アタシが欲しいものは奪っていく。アタシには何もくれない癖に」

「自分しかいないのよ、結局。自分だけが可愛いくせに、その自分も好きだって感じない…哀れね……」

床に転げているシンジを見下ろすアスカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、アンタちょっとはむらっとかこないの?」

ミサトの家――アスカの部屋でシンジがアスカの背中を拭いている。

「むらっとって…」
何かぶちぶちと言いた気なシンジだが、結局は何も紡げない。

「こんな美人の裸見てるのに、興奮しないのか、って言ってるのよっ」
背中越しだから彼女の顔は見えないが、耳が僅かに赤くなっている。

「そ、そんなの分からないよっ」
狼狽するシンジ。

「ケンスケからエロDVD借りて、アタシに隠れてみてる癖に…アタシが知らないと思ったの? アタシの写真オカズにしてんの。」

シンジの息が詰まる。

つばを飲み込む。

 

「アタシの事、好き…?」

打って変って、愛らしく。

「え……アスカを…そ、そりゃキライじゃないけど……」

まだ狼狽えながらも、なんとか答えるシンジ。

「ホントに…?」
「うん……」

アスカが、振り返る。

 

 

 

 

潰れた左目からは血を流し、そして右の眼球が零れ落ちている。鼻は拉げ、口も、歯茎が剥き出しに。

 

 

「愛してくれるよね、シンジなら…」

「ひっ……………ひぃ……っ  うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

アスカの身体が崩れ落ちる。

 

「愛してるわよ、シンジ…ねえ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う、アスカはもういないんだ、死んじゃったんだ!」

コンソールを叩くシンジ。

「もう、何もいらない、いらない…」

ぶつぶつと、シンジが呟く。

 

 

「では、何故ここにいるの?」

 

それはレイの声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パイロットの反応が限りなく0に近づいていきます!」
「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過、なおも上昇中!」

青葉と日向は状況を淡々を報告していく。彼らに許されているのは観る事。 MAGIが現在の高度が22万Km,F層に突入した事を報告する。

「EVA全機健在!」

日向の声も悲鳴に近い。どこまで続くのか、分からない。

「リリスよりのアンチATフィールド、更に拡大、物質化されます…」

 

 

更に上昇を続ける黒き月を突如光が覆い、リリスが大気圏外に身体を起こす。

そしてリリスはその手で、月を掬い上げる。

「アンチATフィールド、臨界点を突破」
「ダメです。このままでは個体生命の形が維持できません」
日向と青葉がまだ頑張っている中、マヤは発令所の片隅で震えていた。
 
リリスが六対、十二枚の羽根を広げていく。

「ガフの部屋が開く。世界の…始まりと終局の扉が、遂に開いてしまうか…」

 

冬月が独りごちる。

その冬月の傍に何故かレイがいる。

「碇…おまえもユイ君に逢えたのか…?」

 

彼が手に持っていたマグカップが床に落ち、粉々に割れる。

そして、彼の姿が消える。

 

日向の前にも、微笑むレイが。

「ひぃぃっ!」

レイの手が、彼の顔に伸び、すると彼女の姿が葛城ミサトに変わり、彼に口付ける。

彼の姿も、消える。

 

 

青葉の前にもレイがいる。怯える彼にレイが触れた瞬間に彼も、消えた。

 

 

「ATフィールドが…みんなのATフィールドが消えていく…これが、答なの…? 私の求めていた…!」

震えているマヤの後ろから彼女を覆う白衣に包まれた腕。

その指が動く。

『マ・ヤ』

マヤの頬をリツコがさすり、彼女を抱き締める。

「先輩っ 先輩っ!!」

彼女も消える。 端末に残った言葉は I need you   。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この時を……ただひたすら待ち続けていた。ようやく会えたな…ユイ…」
床に倒れたゲンドウの傍らに立つユイ。

 

さっきまでリツコもゲンドウの傍にいたが、現れたレイに触れられた瞬間にLCLへと還った。その後、レイの姿がユイに変わって今に至る。

 

「オレがそばにいるとシンジをキズつけるだけだ。だから、何もしない方がいい
彼は珍しく饒舌だった。いや、これが本来の彼=ユイだけが知っていた彼なのだろう。

「シンジが怖かったのね」
「自分が人から愛されるとは信じられない。私にそんな資格はない
ゲンドウの頭の方に立っているのはカヲル。
「ただ、逃げてるだけなんだ。自分がキズつく前に、世界を拒絶している」
「人の間にある形もなく、目にも見えないものが」
ユイがその先を紡ぐ。

「怖くて、心を閉じるしかなかったのね」
レイがその最後を閉じる。

「その報いが、このあり様か…。すまなかったな…シンジ」
初号機に頭から食われるゲンドウ。

だが、その顔は安らかで、満足したまま、食われていた。

床に残されたのは彼がいつも着用していた朱色に染められたレンズの眼鏡。それを大事そうに拾う、包帯を巻いた制服姿のレイ。

その後ろには、上半身を食いちぎられたゲンドウの脚だけが立っている。
そして、幼いレイと、裸のレイ。がその脚を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼いころ描いた絵には紅い顔で小屋の中で血を流しているもの。

紅い身体とそれを見ている女性と、青い服の男の子と、赤い服を着て槍を持っている女の子。

バケツの中には2匹の魚と、そして月。

 

クルマに轢かれ、腸の飛び出した犬。

 

ホルマリン漬けの魚。

 

 

身体を切り裂かれて血を吹き出す人。

 

 

信号機は赤。

 

 

猫は目を覚まさない。

 

 

 

 

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ?」
「何?」
「夢って、何かな?」
「夢?」
「そう…夢」

 


 





「判らない。現実がよく判らないんだ」
何も分かっていない、白痴の再生機械のように紡ぐ。

「他人の現実と自分の真実との溝が、正確に把握できないのね」
レイの顔に満ちているのは慈愛。

「幸せが何処にあるのか、判らないんだ」
レイに組み敷かれている、シンジは亡羊とした顔をしている。

「夢の中にしか幸せを見いだせないのね」
レイの声に非難する響きはない。

「だから、これは現実じゃない。誰もいない世界だ」
「そう、夢」
「だから、ココには僕がいない」
「都合のいい、作り事で現実の復讐をしていたのね」
「いけないの?」
「虚構に逃げて、真実をごまかしていたのね」
レイの口調は少しずつ変わっていく。

「僕一人の夢を見ちゃいけないの?」
「それは夢じゃない。ただの現実の埋め合わせよ」

それは何処かの劇場。
満員の客席。
ざわめき。
空の客席。

「じゃあ、僕の夢はどこ?」
「それは、現実のつづき」
「僕の現実はどこ?」
「それは、夢の終わりよ」

レイの言葉と共にリリスの首筋から噴きだす血飛沫。その血は月にまで達している。

 

倒れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水面と重なって見えるのは満月。
レイとシンジ何もない。レイがシンジの上にいる。

「綾波…ココは?」
確認するように尋ねるシンジ。

「ココはLCLの海。生命の源の海の中。ATフィールドを失った、自分の形を失った世界。どこまでが自分で、どこからが他人なのか判らない曖昧な世界。どこまでも自分で、どこにも自分がいなくなっている静寂な世界」
レイの口調、それはいつもと変わるところが無い。

「僕は死んだの?」
「いいえ。全てが一つになっているだけ。これが、あなたの望んだ世界そのものよ」
「望んだ世界…」

 

シンジは沈黙した。

 

 

アスカが砕け散った瞬間に、自分の存在価値を全てなくしたような気がした。

そして、あんなにも無残にアスカが居なくなっちゃう世界なら、なくなってしまえ、と思った。アスカを傷つける、傷つけた世界なんて消えちゃえ、と思った。

でも…

 

 

「でも、違うと思う…」

「他人の存在を、今一度望めば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」
それはカヲルが指摘したこと。

「いいんだ…」

そして、アスカが教えてくれたこと。

「ありがとう」

感謝の言葉。

レイの手を握るシンジ。

 

 

いつしか、シンジはレイの膝枕で眠っていた。

「あそこでは…イヤな事が多かった気がする。だから、きっと逃げ出してもよかったんだ。でも、逃げたところにもいいことはなかった。だって…僕が、いないもの…。誰もいないのと同じだもの」

逃げ出した先にあったのは結局自分以外の『誰か』の世界。

「再びATフィールドが、君や他人をキズつけてもいいのかい?」
カヲルが世界に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジの前に立っているのはレイとカヲル。皆服を着ている。水面から畑に場面は変わっていた。

「かまわない…でも、僕の心の中にいる君達は何?」

人々が沸いてくる。

「希望なのよ。ヒトは互いに判りあえるかも知れない…ということの」

「好きだ、という言葉とともにね」

それは何を指しているのか…言われなくても分かっていた。だから、カヲル君はあんなに明るく笑った。

 

 

景色が大地、森、道路、人ごみへと変わっていく。

 

「だけど、それは見せかけかもしれない。

 自分の思い込みだから。

 人の心なんて、分からないから。

 だから祈りみたいなものなんだ。

 ずっと続くはずないけど…いつかは裏切られるかもしれない。…僕を見捨てるかもしれない………」

でも、シンジは続けた。

 

「でも、僕はもう一度遭いたいと思った。その時の気持ちは本当だと思うから」

 

浮かんでくる、みんなのイメージ。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリスが倒れ、羽根がたたまれていく。 そして、その目を破って初号機が産まれる。背中に生えている六対 十二枚の羽根を広げ、産声を上げる。

 


青白い光が、地表を這うように放射状に伸びていく。
エヴァシリーズが取り囲む黒き月に子午線と経線を描くように赤い線が刻まれる。

倒れたリリスの身体が、風化するように溶けていく。
そして、黒き月がはじけ、赤い光球が地表を流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現実は、知らないところにある。夢は現実の中に…」
「そして、真実は心の中にある」
カヲルが始め、レイが続ける。

「ヒトの心が、自分自身の形を造り出しているからね」
「そして、新たなイメージがその人の心も形も変えていくわ。イメージが、創造する力を、自分の未来を、時の流れを…造り出しているわ」

リリスの首が、地球へと落下していく。

「ただヒトは、自分自身の意志で動かなければ何も変わらない」
「だから、見失った自分は、自分の力で取りもどすのよ。たとえ、自分の言葉を失っても…。他人の言葉が取り込まれても…」

 

初号機が、自らロンギヌスの槍を口から引き抜く。
ロンギヌスの槍が光を発し、エヴァシリーズのロンギヌスの槍も消え去る。



「自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もがヒトの形に戻れるわ」
地表に落下していくエヴァシリーズ。煌びやかな輝きを残しながら。

「心配ないわよ。全ての生命には復元しようをする力があるの。生きてこうとする心があるの。生きていこうとさえ思えば、どこだって天国になるわ。だって生きているんですもの…・・幸せになるチャンスはどこにでもあるわ」

ユイ。 もう遠くの昔に消えた母親。

「太陽と、月と、地球が、ある限り…。大丈夫」

 

羽根を折り畳むエヴァ初号機。
更に上昇していく光の十字架。
宙に漂う光の十字架のような初号機。 崩れた初号機の瞳に輝きは、ない。



 

 

水が滴る音

 

 

「もう、いいのね?」
「…幸せがどこにあるのか、まだ判らない。だけど、ココにいて、生まれてきてどうだったのかは、これからも考え続ける。だけど、それも当たり前のことに何度も気づくだけなんだ…。自分が自分でいるために…」
シンジの頬をさするユイ。

 

シンジとユイが離れていく。
LCLの海から浮き上がるシンジ。
水面に浮いている。
地上では、リリスであるレイの大きな顔が、まっぷたつに割れていく。
「でも、母さんは…母さんはどうするの?」

湖畔の大きな木の下で話をしている冬月とユイ。
ユイはシンジを抱いている。

それはユイの記憶。シンジにも伝えたいこと。

 

「ヒトが神に似せてEVAを造る、これが真の目的かね?」
「はい。ヒトはこの星でしか生きられません。…でも、EVAは無限に生きられます。その中に宿る人の心とともに…」
「たとえ、50億年たって、この地球も、月も…太陽さえなくしても残りますわ。たった一人でも生きていけたら…。とても寂しいけど、生きていけるなら…」
「ヒトの生きた証は、永遠に残るか…」

 

 

初号機とロンギヌスの槍が暗闇に遠ざかっていく。

「さよなら…。母さん」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシがかえるばしょ。[3]
Writen by Patient No.324

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


そこは見たことも無い浜辺。

赤い、真っ赤な海。

水平線の彼方に半分水没しているのはリリスのーレイの、首。

十字架のように並んだのはエヴァシリーズ。

太古のオブジェのような、石像のような…

 

赤い海に星が瞬く。

 

シンジが気が付いたのは、夜。

 

寝息が聞こえる。

 

横を向くと、傍らに居るのはアスカ。右手に包帯を巻き、左眼には眼帯。

 

 

シンジは、アスカの首に手を当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指先に伝わる、アスカの鼓動。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスカの体温が、シンジにも伝わっていく。

 

 

少しだけ、彼の頬が濡れる。

 

 

彼は転がるようにアスカに近づくと、彼女の頭を少し持ち上げて自分の腕を下に滑り込ませた。

「…………」

その瞬間、アスカの眼が見開かれる。

少しだけ…ほんの少しだけ、シンジは驚いた。

彼は何も言わずに彼女を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

To Be Continued...