設定は補完計画発動後の世界・・・
つまり学園物です。





いつもと変わらない朝。

いつもと変わらない授業。

いつもと変わらない放課後・・・になる予定だった。そう、今までは・・・




記念日





「さっさとしなさい!バカシンジ!」

「待ってよ!アスカ!」

いつもの通り帰ろうとしているアスカ。
それを見た僕はちょっと焦って荷物をしまい始めた。

「ったく、あんたとろいわねぇ。さっさとしないと日が暮れちゃうでしょ!」
「ご、ごめん。もうちょっとだから・・・」
「あーら、仲がいいのねぇ」
「「ミサト先生!」」

そこに現れたのは、担任のミサト先生。
僕たちを見ながらニヤニヤとしている。

「アスカ、ちこっとシンちゃん借りるわねー」
「へ?」

僕に向かって不吉な笑みを浮かべると、ミサト先生はそう言った。

「ちょっと、ミサト!いきなりなによ。」
「あーら、アスカ、愛しのシンちゃんと一緒に帰れないのがそんなに残念なの?」
「そ、そんなことないじゃない!誰がバカシンジと一緒に帰ろうって言うの?」
「ア・ス・カ(はーと)」
「そ、そんなわけないじゃない! ヒカリ!さっさと帰りましょうよ!」
「あ、う、うん。じゃあね、碇君」

ずかずかと教室を出ていくアスカ、その後を追いかける委員長。
僕は今日の夜の事を思うと深いため息をついた。

「あーら、どうしたの?シンちゃん。ため息なんかついちゃって。」

にやりとした笑いを浮かべながらきいてくるミサト先生。
僕は(今晩が怖いんです)などとはいえずに

「ミサト先生。なにか僕に用事があるんじゃないんですか?」
「そうなのよ。このプリント綾波さんちに届けてほしいのよ。」

そういってひらひらとプリントを見せた。

「何で僕なんですか?」

何かいやな予感を感じて、冷や汗をかきながら僕は訪ねてみた。

「転校初日から仲良さそうだったからねぇ(^^)。シンちゃんに頼もうと思って。」

そう言うミサトさんの目はなぜかきらきらと輝いていた。

「彼女の住所はここね。シンちゃんちから結構近いでしょ?」

見せられた住所は僕のうちからそう離れていない。
でも、それだけが理由じゃない気がする・・・

「あ、あとついでだからお見舞いしてきてあげれば?」

?僕は何か引っかかる物を感じてミサト先生に尋ねた。

「お見舞いですか?綾波風邪でしたっけ?今日は無断欠席だって言ってませんでした?」
「それがね、さっき電話があって風邪引いてるんだって。」

何か釈然としない物を感じながら、僕は頷いた。

「わかりました。届けてきます。それだけですか?」
「ええ、じゃ、よろしくねん(はーと)」

そう言ってミサト先生は教室から出ていった。
周りを見回してみると、トウジとケンスケはすでに帰ったらしく、僕の周りには誰もいない。

「みんなおいてかなくてもいいじゃないか・・・」

そうつぶやくと、一人でとぼとぼと綾波のうちへ向かった。




「まったく、あいつったらすぐにでれでれしちゃって」

私はそうつぶやきながら出口に向かって歩いていった。

「ちょっとまって、アスカ!」
「あ、ごめん、ヒカリ」
「もぅ、そんなに急がないでよ。」
「ごめんね。」

私は彼女に謝る。
彼女にだけは素直になれる。

「ヒカリ、私の家の近くにファンシーショップができたのよ。」
「じゃあ、そこを覗きに行きましょ。」

そうして私たちはお店に向かった。
そうこうしているうちに、ファンシーショップについた。

「あ、これかわいー!」
「このペンなんてどう?」
「そう?こっちのぬいぐるみもかわいいわよ?」
「そろそろでましょ、ヒカリ。」
「そうね。私はお買い物して帰りましょ。」
「じゃ、明日学校でね。アスカ」
「うん、じゃね。ヒカリ!」

お店を出て私はヒカリとは反対方向に歩いていく。

「あ、アスカじゃないか。」
「あら、シンジどこいくの?」
「ミサト先生から頼まれてね。綾波の家にプリントを届けなきゃいけないんだ。」

私は胸の奥が少し痛んだ。
シンジがレイの家に行く・・・
ただ、プリントを届けるだけなのに・・・
そこで気がついた。
シンジが何かきれいな箱を持っているのを・・・

「シンジ?なに持ってるの?」
「あ、これ?綾波が風邪で寝込んでるらしいから。ケーキでももってこうかなって・・・」
「ふ、ふーん。」
「あら?レイってずる休みとか言ってなかったっけ?」
「なんかね、今日は親がいなくて一人でねてたらしいよ。それで連絡が遅れたんだって。」

あ、まただ・・・
胸の奥がちくりとする。
一人で寝てるレイ・・・それを見舞いに行くシンジ・・・
ふつうに考えれば当たり前なのに・・・

「わたしも行く!」
「え?どうして・・」
「私が一緒に行くと何か不都合でもあるの?ははーん。レイとふたりっきりのところをじゃまされたくないんでしょ?」

こんな事が言いたいんじゃない・・・
なんで、素直にいえないんだろう・・・

「そ、そんなわけないだろ!」
「は、どーだか!どうせあんたは馬鹿でスケベだから・・・」

ちがう。言いたいのはそんな事じゃない!
なんで素直にいえないの?

「いいだろ!僕はもう行くからね!」
「なによ!あんた私に逆らう気?」

あ、シンジが怒った・・・
どうしよう・・・
何で素直に謝れないの?
どうして?

「あ、シンジ・・・」
「じゃね、アスカ」

シンジが私に背を向けた。
胸の奥に走る痛み・・・
どうして?
何でこんなに胸が痛むの?
私はそのままシンジを見送ってしまった。













気がつくと、公園のベンチにいた。
何で、私はシンジに素直になれないんだろう・・・

スナオニナリタイノネ

どうして素直になりたいんだろう?

ホントウノキモチヲツタエタイノネ

本当の気持ちってなに?

シンジノコトヲオモッテイル

何であんな馬鹿が気になるの?

ワカラナイノ?









そう、私はシンジのことが好きなんだ・・・

認めてしまえばいいんだ。

自分の気持ちに素直になって・・・

そうすればもっと素直になれるかな。

うん。きっと素直になれるはず。

明日からきっと・・・・・・・











私の初めての記念日

シンジを好きだと確認した日。

これから先いっぱい記念日はできるだろうけど。

この日だけは忘れない。

 

初恋の始まりだけは・・・・・・

 

Fin

 

 

 

 

 

Next 


後のあがき。

うじゃー。

これが、私が初めて書いたSSです。

前後編に仕立てたのですが、リニューアルを期に、一つにまとめてみました。

感想をいただけるとうれしいです。 -> Mail

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