このトウジの発言で海に行く事が決定した。(唐突だな、作者よ)
勿論ネルフ勤務?のシンジ、アスカは行けないだろう。
そう諦めていたのだが、意外な事に許可が下りたのだ。
ミサトが『あまりにも可哀相だ』と、ゲンドウに申請しに行った時のことだ。
「葛城三佐、君もパイロットの護衛として同行する事。
それが条件だ。これは休暇ではない、命令だ。誤解の無いように」
意外にもこの世界のゲンドウはおちゃっぴいゲンドウだったようだ。
「ええっ?行っても良いんですか?」
「本当に!?やったー!!」
諦めていたシンジとアスカは文字通り飛び上がって喜んだ。
「ええ、本当よ。しかもこれは命令なの。全額経費で落ちるわよ」(ニヤリ)
すでに頭の中はエビチュ一色の葛城三佐であった。
ざざぁ〜ざざぁ〜(波の音だと思ってくれ)
「シンジ……夕日が綺麗ね……」
「うん、綺麗だ……。でも、アスカの方がもっと綺麗だよ……」
「えっ?シ、シンジったら冗談上手くなっちゃって……」
「冗談なんかじゃないよ。アスカ、本当に綺麗だ……」
「シンジ……」
「アスカ……」
見つめあう瞳、近づく唇
(な〜んて事になったりして)
「……ぐぅぅふぅふぅふぅふぅふぅー……」
妄想の世界に入り込み、ドラ○もんの様に笑うアスカであった。
「……アスカ、どうしたの?突然笑い出したりして」
突然顔を覗き込まれてアスカは狼狽する。
自分の妄想がシンジにバレてしまったような気がしてしまったのだ。
「えっ!いや何でもないわよ、バカシンジ!!」
「そっか、良かった。いつものアスカだね」
笑顔で言うシンジにアスカはドキッとしてしまう。
「ほらほら、そうと決まったら早速準備して、明日なんだから」
「「ええ〜!?明日ぁ〜!!??」」
大声を上げて驚く二人にミサトが悪びれもせずに答える。
「そうよん!……言ってなかったけ?」
「聞いてないですよ、ミサトさん!」
「そうよ!それにヒカリ達にも連絡しなきゃ」
ミサトの度忘れで途端に慌ただしくなる葛城家。 「ああ〜、それなら心配ないわ。ネルフから連絡したから」
「(ネ、ネルフから・・・)そ、それで皆の都合は?」
「みーんなオッケーだってさ。安心して♪」
「それならいいのよ。じゃあ準備しなきゃ、それじゃ!」
そう言って自分の部屋に消えるアスカ。
「それじゃあ僕も」
シンジも準備を始める。
「(さぁて、明日が楽しみね)」
そして次の日。
もう海に着いている御一行であった。(作者の都合)
「うーんやっぱ海はええわー」
「クックック撮るぞ。撮って撮って撮りまくるぞ!(そして売る!!)」
「鈴原と進展を・・・キャッ」
「ビール、ビール、ビール」
「・・・・・海・・・・・塩水・・・・・塩・・・・・塩ラーメン・・・・・札幌・・・・・」
「シンジと二人っきりになって・・・・それから・・・(ポッ)」
「泳げるようになったかな・・・LCLで慣れたから少しは・・・」
それぞれの思いを胸に秘め、今、波乱が巻き起こる。(毎度の事だが)
「おい、ケンスケぇ。惣流と綾波撮っとるんか?」
「ああ、惣流は赤一色のビキニ、綾波は白一色のワンピース、これは売れる!」
そう言うや否やガンガン撮りまくるケンスケ。
フィルムを入れ忘れた事に気付かずに……。
「シンジぃ!どう、似合う?」
アスカがシンジの前で、クルッと一回転して聞く。
「うん、すごく良く似合ってるよ。赤ってやっぱりアスカの色だね」
「・・・え?本当に?」
シンジがはっきりと誉めてくれた事が信じられないようだ。
まあ今迄のシンジがあれだったから無理も無いだろう。
しかし、あの時以来シンジは変わった。(#1参照)
自分の気持ちを素直に言えるようになっていた。(顔は真っ赤だが)
「本当に本当?ねえ、もう一回言って」
「本当だよ、すごく良く似合ってる」(顔真っ赤)
「……シンジぃ!嬉しい!!」
シンジに抱き着くアスカ。
「うあぁぁー!シシシシシシ、シンジ!!!!!」
「お、お前っちゅう奴は!なんっちゅう羨ましい事を!!」
それを見ていたケンスケとトウジは大騒ぎである。
確かに独り身には目も当てられない光景なのは間違いない。
「「いやーんな感じ!!」」(使いたく無かったがお約束という事で)
「二人とも不潔よ!!」
そんな事を言いつつも『…羨ましい…私も鈴原とあんな風に…そして、あーんな事やこーんな事をして、ズッコンバッコンズッコンバッコン…エヘ、エヘ、グヘヘヘヘヘェ、ジュルルルル』と思うヒカリであった。(爆)
そんな事を三人に言われ、顔を赤くして離れる二人。
「いいじゃない!ア、アタシ達はお互い、そ、その、す、好きなんだから……」
「え、えーと、その、そういう事だから、あ、あんまり冷やかさないでほしいな」
照れながらも肯定したシンジに感動するアスカ。
「……嬉しいよぉ、シンジぃ」
そして、もう一度シンジに抱き着く。
さっきよりも強く、深く。
「……アスカ……」
そんなアスカの気持ちを察したのか、シンジも強くアスカを抱きしめる。
「お、お前らいつの間にそんな仲に」
「ホンマや。全然気付かんかったわ」
「アスカ、良かったわね」
唐突だがその頃、レイがナンパをされていた。(本当に唐突だな、作者よ)
C「ねえ、君一人?一緒に遊ばない?」
「……遊ぶ……何をして?」
C「えっと俺と一緒に泳いだりして・・・」
目を合わせずに話すレイ。
「……つまらない……」
C「え?じゃ、じゃあ何したいの?」
「……バンジージャンプ……」
C「……え?……」
「……バンジージャンプ……」
そう言うと、レイは立ち上がり男に近づいていく。
男はワケが分からず立ち尽くしていた。
「……バンジージャンプ……」
一瞬。ほんの一瞬だけ、強力で小規模なATフィールドが発生した。
気付いたのはシンジ、アスカ、ミサトだけだろう。
男は吹っ飛んだ。何をされたかも解らないまま。
「……フフフフ……バンジージャンプ……楽しいでしょ……」(ちょっと違うぞ)
空を見上げ、男に問い掛ける。だが当然聞こえる筈も無い。
「な、なんや?飛んでったで、あの兄ちゃん」
「しまったぁ!決定的瞬間を撮り逃すとは・・・不覚!」
「でも、本当に何だったのかしら?」
「……綾波、凄い事するなぁ……」(そういう問題か?)
「はぁ、全くいい迷惑よ。それよりシンジ、泳ぎましょ」
「え?ああ、その事なんだけど。実は僕、泳げないんだ」
恥ずかしそうに告白するシンジ。
そんな表情も可愛いとアスカは思っていた。
「ええぇ〜!!ほ、本当に?」
心底驚いたというような表情のアスカ。
「う、うん。ほら、前アスカと綾波がプールで泳いでた時も……」
「えーと、そう言えばシンジは宿題やってたわね」
「うん、今はLCLで慣れたから、もしかしたらって思ってるんだけど」
話を聞き、しばし考え込むアスカ。
名案が浮かんだのか、笑顔になる。
「よしっ!アタシが特訓してあげる」
「ありがと、アスカ」
「べ、別にいいわよ。お礼はしてもらうから」
顔を赤くして言うアスカ。
「え?お礼って?」
「そ、それは後でいいわ。とにかく行きましょ!」
シンジの手を取り、海に向うアスカ。
思い立ったら即行動。アスカらしいなと思い、シンジは微笑んだ。
「なんや、何時の間にあんなに仲良うなったんや?あの二人」
「全くだよ。ああ、これで惣流の写真販売率が落ちる。トホホ」
「まあ良いじゃない。二人とも素直になった結果なんだから」
三人は知っていた。
シンジとアスカがエヴァのパイロットだという事を。
それで辛い思いをしている事を。
「ま、そやな。なんだかんだ言うて、前からあんなモンやったからな」
「そうだね。売り上げが減るのは残念だけど、仕方ないか」
「そういう事!成るべくして成ったって事よ、あの二人は」
アスカとシンジを見るトウジ達。
そして思い出したようにトウジが口を開く。
「そう言や、ミサトさんどないした?」
「えーと。……げっ、凄い事になってるぞ」
「自分で燃えないゴミの袋持って来てる。最初から飲むつもりだったのね」
そう、ミサトは飲んでいた。すでに15の空缶が破棄されていた。
ヒカリの推測どうり、自分で自分専用の燃えないゴミの袋を持参していたのだ。
しかも、ペースはまだMAXに達していないようだ。
「っかぁぁぁぁ!やっぱ浜辺で飲むビールは最高だわ!!」
既にオッサンと化しているミサト。
そして無謀にも、オッサン・ミサトに声を掛ける命知らずがいた。
D「ねえ、お姉さん。俺達と飲まない?奢るからさ」
ギラッと野獣の瞳で声をかけてきた二人組を睨みつける。
良い気分で飲んでる所を邪魔されて、御立腹のようだ。
「うっさいわねー。邪魔すんじゃないわよ」
D「そんな事言わないでよ」
E「いいじゃん。俺らと飲もうよ」
オッサン・ミサトはキレた。(早いな)
「うっさいって言ってるのよ!!!」
ゴキィ!!!
何かが折れたような鈍い音がする。
おっさんミサトが、男Dに合掌捻りを食らわせたのだ。
そして、男Eに一言も話す暇を与えずロメロ・スペシャルを掛ける。
ゴキゴキベキッ!!!
一気に力を加えたので男Eは一瞬で気を失った。
「全く、人が良い気分で飲んでるのに邪魔すんじゃないわよ」
パンパンと手に付いた砂を払いながら酒の元に戻るオッサン・ミサト。
ミサトをナンパしようとしていた男達は、音速で消えて行った。
「……ミサトさん。ごっつ怖いわ」
「……イメージが崩れていく」
「……今は近づかない方がいいみたいね」
ミサトの真の姿を見てしまった三人は危うきに近寄らずを決め込んだ。
「ほな、ワシらも泳ごか」
「ああ、じゃあ委員長と先に行っててくれよ。カメラ置いてくるから」
「え、ええ。じゃ、じゃあ行こうか鈴原」
「あ、ああ」
照れまくって海に向かう二人であった。
勿論すぐにケンスケが合流したのは言うまでもない。
そしてシンジ達はと言うと……。
「なによ、結構泳げるじゃないの」
「うん、自分でもビックリしてるよ」
特訓は無事に終わり、浜辺で仲良く話し込んでいた。
「LCLで慣れたからか、もしかしたら再構成の影響かもね」
「まあ、何にしても、泳げる様になって良かったじゃない」
「うん、アスカのお陰だよ。ありがとうアスカ」
「べ、別にアタシは……」
邪魔とはこういう時に入るものだ。(この作者は特に)
F「ねえ、君。俺達と遊ばない?」
いかにも柄の悪そうな男が三人、ヘラヘラ笑いながらアスカに声をかけてきた。 「なによアンタ達、このアタシに声を掛けるなんて100年早いわよ!」
G「そんな事言わずにいいから遊ぼうぜ」
H「そんな冴えないガキなんて放っておいてさ」
アスカの腕を乱暴に掴み無理矢理立たせる。
「何すんのよ!離しなさいよ!!」
パァンと思い切り力を込めたアスカの平手が炸裂する。
F「いってえな、このアマ!!」
平手を食らった男が報復するために拳を上げる。
ガッ
アスカは来る筈の衝撃が来ないので目を開けてみる。
そこには男Fの腕を受け止めるシンジがいた。
「乱暴はよして下さい」
G「なんだと、てめぇガキ」
H「殺すぞコラァ」
アスカは相手が一人なら男にも勝てる。
男Fの顔面に三沢光晴ばりのエルボーを食らわせ、倒れた男Fをボコボコにする(笑)
「あとはあなた達二人だけですよ」
冷静に事実を告げるシンジの様子に男達は激昂する。
G「うるせえっ!」
H「ぶっ殺すっ!」
しかし、シンジはごっつ強い。
しかもアスカが絡めば容赦ない。(変わったなシンジ……それは作者の思惑か)
顔色一つ変えず、息も乱さずに男二人をボコボコにするシンジ。
「全く、いくらアタシが美しいからって、身の程を知れっていうのよ」
「ハハハ、まあ取りあえずここから離れよう、アスカ」
「そうね、そうしましょ」
海沿いに浜辺を歩く二人。
「シンジ、あのね、聞いて欲しい事があるの」
いつに無く真剣に、そして暗い調子で話すアスカ。
「うん、何?」
「……アタシの事。……ここに来る前のアタシの事」
「……うん」
そしてアスカは話した。母親の事、父親の事、自分の事、全てを。
「そっか、僕だけじゃないんだね、辛い思いをしてるのは。
当たり前か、そんな事。……当たり前の事に気付いてないだけだったんだ」
「……アタシも同じ。当たり前の事に気付かなかった」
アスカはほんの少し前の自分を思いだし、寂しげな表情になった。
だが、今はもう違う。だからこそシンジは話しだした。
「でも、辛い事ばかりじゃない。これも本当の事だしね」
「そうね、辛い事だけじゃない。今ここに居るからそう思える。
皆に、ヒカリに、何よりシンジに逢えた」
「……アスカ……それは僕も同じだよ。何故あの街に居るのか解らなかった。
エヴァに乗る理由が無かった。・・・でも、あの街に来たから皆に、アスカに逢えた。
そして皆を守りたいから、今エヴァに乗ってる」
「アタシは、初めは自分の為だけに乗ってた。そうしないと誰もアタシを見てくれない。
……そう思っていた。……でも、それはアタシが勝手にそう思っていただけ。
アタシをアタシとして見てくれる人がいるって気付いたの。シンジのお陰で」
「うん、僕は見てたよ。家でのアスカ、学校でのアスカ、それ以外でも。
それは間違いなくエヴァのパイロットじゃないアスカだ」
「ありがとうシンジ。だからね、さよならするの。……ママに。
もう大丈夫だよって、アタシは一人じゃないよって、アタシにはシンジが居るよって」
「……それだけじゃないよ」
「えっ?」
「僕の側にもアスカが居てくれる。上手く言えないけど、それが僕には嬉しい」
「……シンジ……アタシにシンジが必要だと思うように……
……シンジにもアタシが必要だって……思ってくれるの?」
「……言葉にするなら……きっとそうだと思う……
……ごめん、やっぱり上手く言えないや……」
照れたようにシンジは笑った。
アスカはそんなシンジを見て、優しげな表情で首を横に振る。
「ううん、それだけで充分嬉しいよ、シンジ」
「いつか使徒が来なくなる日が来る。
そうなれば、エヴァに乗る必要も無くなる。
でも、今の僕ならエヴァが無くても自分でいられる。そう思える」
「アタシもそう。負ける事が悪い事じゃないって思える。その分強くなれるから。
弱い自分を見せるのがいけない事じゃないって思える。それも自分だから。
今なら、エヴァのパイロットじゃないアタシを認められる。そう思える」
「……アスカが居てくれるから……」
「……シンジが居てくれるから……」
しばしの間、黙って歩く二人。
心地よい沈黙。
そしてアスカが口を開く。
「……アタシね、シンジの前だと素直になれるの。
勿論、いつもってワケじゃ無いけど、素直になれるの。
前は、いつも意地を張って、自分の弱さを隠してたけど、今は違うの。
……シンジだから……シンジにもっといろんなアタシを見て欲しいから……」
「……僕も、もっといろんなアスカを見たい。
そして、もっといろんな僕を見て欲しい。アスカに……」
「……うん、見てあげる。ずっとずっとシンジの事見てあげる。ううん、見ていたい」
ついにアスカは、本当の意味で過去の呪縛から解き放たれた。
一人の少年によって、偽りの無い自分に戻っていた。
見つめ合う二人。
自然とお互いを抱きしめる。
「……ありがとう……アスカに逢えて良かった……」
「……アタシもだよ……シンジに逢えて良かった……」
ただお互いの存在を確かめるように抱き合う二人。
「……ねえ、特訓のお礼の事、憶えてる?」
「え?うん、後でいいって言ってたよね?」
「うん、今返してもらう」
「えっと、何をすればいいのかな?」
アスカの頬がほんのりと赤くなった。
「……キス……して欲しい……」
「……うん、分かった……」
そしてシンジはアスカにキスをする。
少し長めのキス。
そして離れる唇。
「……シンジ、アタシ、今幸せだよ。
みんなが居て、ミサトが居て、ヒカリが居て、何よりシンジが居る」
「……僕も同じだよ、アスカ……」
「……シンジ……」
まるで最終回のような展開だが、そんなワケはない。
「くおらぁぁ!そこおぉ、ぬわぁにやっとるかぁぁ!!」
お待たせしました、オッサン・ミサトの登場である。(待ってねえか)
「げっ!!ミサトさん!!!」
「ヤバイわよ!追い詰められた獣の目をしてるわ!!!」
死
シンジとアスカの脳裏に、その一文字が浮かぶ。
どうやらトウジ達は無事のようだ。
レイは相変わらず無関心で、どこか遠くを見ながら体育座りをしている。
無関係の通行人を容赦なくブッ飛ばしながら近づいてくるミサト。
途中、何度かジャンプして受け身をとる。
理解不能なその行動がミサトの暴走度の高さを表わしている。
「どどどどどど、どうしよう、シンジぃ」
アスカは余程恐ろしいのか、シンジの腕にしがみつく。
しかし、いくら強くなったシンジといえど、暴走ミサトは恐怖の対象だった。
だが、シンジを責めてはいけない。それ程の破壊力をヤツは持っているのだ。
「だ、大丈夫。アスカだけは守ってみせるから」
「シンジぃ」
そうしている間にも、ミサトはフラフラと近づいてくる。
「ここまでなの?嫌だな」
ミサトの接近は、マグマの中に落ちるのと同じ意味を持つようだ。
その時、シンジが何かを見つけ、声をあげる。
「あれだ!ミ、ミサトさん、ほら、まだビールが残ってますよ!!」
ピクッと反応し、シンジの指差す方を見る。
ニヘラ〜と顔を歪めシンジ達に視線を戻す。
「シンちゃぁん教えてくれてありがと。ぐふふふふふぅぅぅ」
そう言うとビールに向い帰っていくミサト。
よく見ると、燃えないゴミの袋が一袋満杯になっていた。
「た、助かった……」
「ふぅ、本当だわ。シンジ、ミサトの酒量減らした方がいいわよ」
「そうだね。でも、ミサトさんだからなぁ」
「言っても聞かないかっ!」
「そういう事!!」
「「ハハハハハハ」」
二人で大笑いする。
過去の彼らを知る者には信じられない光景だろう。
しかし、今現実に二人は笑っている。
偽りじゃない、作り物じゃない、心からの笑顔で。
そうしている内に、ミサトも大分落ち着いたようだ。(酔ってるが)
そして、ようやく安心出来たシンジとアスカはトウジ達の所に行く。
そこに居たアホの子供のような表情のケンスケを見て何かを思い出したアスカ。
「そう言えば相田ぁ!あの時のネガの事なんだけどぉ」(怒)
アスカがめちゃめちゃ怒ってケンスケに詰め寄る。
「そそそそそ惣流!話を聞いてくれ!!」
「アンタ、アタシの肌見たんでしょう?
シンジに最初に見せる筈だったのに、よくもぶち壊してくれたわねぇ」(超怒)
一瞬で顔を青ざめさせたケンスケは慌てて弁解をはじめる。
「ま、待て!見てない!見てないんだ!!本当だっ!!!」
「えっ!?見てないの、ケンスケ!?」
(ちょっと怒っていたシンジであった。)
「あ、ああ。更衣室を撮る時は腕だけ伸ばして撮るんだよ。
それに、あの時は現像する前にジャイアンに奪われたから見てないんだよ」
それを聞き幾分か安堵の表情を見せるアスカであった。
(よかった。これで最初に見せるのはシンジになるのね(ポッ)
「でも、撮ったのは事実よねぇ、相田ぁ!」(怒)
「そ、それはこの前の時、磔にされたからいいだろぉ?」
「あんなモンで済むと思ってるの?冗談じゃないわ!!」
言い終わると同時にケンスケに急角度からレバーブローを食らわす。
その一撃で気を失うケンスケ。
彼が目を覚ました時、彼の体は砂に埋まっていた。
もうすぐ満ち潮だ。
ああ、憐れケンスケに合掌。(当然の報いか)
そして、お帰りになる御一行様。
ネルフ専用バスに乗って帰る六人。(ケンスケは砂の中)
「ぐぉがぁぁぁすぴぃぃぃぐぉがぁぁぁ」
ミサトは酔っ払って寝ている。
「鈴原、お腹空いてない?お弁当買っといたから食べる?」
「ん?すまんなぁ、いいんちょー。腹減ってたんや」
トウジ、ヒカリは結構いい雰囲気だ。
「…………………………ウケッ」
レイは目を開けたまま寝ていた。(寝言付き)
「シンジ、楽しかったね」
「うん、いろんな事があったけど楽しかったね」
そっと寄り添うように座る二人。しっかりと手を繋いでいる。
「また、シンジと一緒に行きたいな」
「うん、来年また来よう」
「……うん、約束だよ、シンジ」
そう言うアスカは可愛かった。
シンジは思わずアスカにキスをした。
ほんの一瞬だけ。
「ど、どうしたの、シンジ?」
顔を真っ赤にしてアスカが聞く。
「キスしたくなったんだ。アスカに」
シンジも顔が赤い。
「……嫌だった?」
その言葉を聞いてアスカは顔を横に振る。
「ううん、嫌じゃないよ。嬉しかったよ。ただビックリしただけ」
シンジからしてくれたの初めてだったから……」
アスカはそう言ってシンジの肩に体重を預ける。
「来年も絶対行こうね。もう約束したんだから」
「うん、約束だね。絶対守るから」
そして再び寄り添い、目を閉じる二人。
こんな御一行様を乗せたバスは家路を目指す。
ただ一人、砂に埋まったケンスケを除いて。(もう潮は満ちかけてる)
「シンジ、今日の晩御飯は?」
「まだ決めてない。何にしようか?」
「んーとね、たらこスパゲティー!!」
「いいね、それ。それにしよう」
「ほんと!?やったー!!」
大勢の賑やかな声が響くバスの中、笑顔で夕食の話をする二人。
二人の一生の記念になる海旅行だったとさ。
おしまい
後書きという名のお詫び2002。
ボクは本気でKOを狙って、プロレス技を出しています。
あのパウロ・フィリョ戦でも彼がタックルにきて、それをボクが踏ん張った。
ちょうどパイルドライバーに入る体勢になったので、失神させるつもりで出しただけです。
by 美濃輪育久