セット論
セット論
ハイ、君に○分の時間を差し上げますのでセット組んでねーよろしくーなんて言われてはいそうですかなんて組めたら苦労しないわけで、かといって現場でお客さんの反応を見ながらやってますセットは組んでいきませんよ(キリッ)なんて玄人の意見はあるレベルまではまったく役に立たないわけで、その辺どうすんのっていう部分について、意識の骨格的な所を考えていきたい。とりあえず「それっぽい」セットを組むための意識付けのきっかけになればいい、そういう薀蓄です。
とりあえず仮に60分のセットを組むとしよう。15分でも30分でもいいのだがテクノのMIXとなれば大体この位は欲しいし色々なパーティでも60分ワンセットくらいでタイムテーブルが組まれる事がほとんどだし、60分という長さは色々なことを考えるにあたってとても都合がよい時間なのでそれでセットを組むことを仮定しておきたい。
まずはテンション曲線を考えよう。最初はどの程度の盛り上がりでスタートして、終わりはどんな風に終わりたいのか。終わりよければ全て良しという言葉もある通り、終わり方が最も重要なのは間違いない。最初でトチっても途中で何か間違えても、最後の2〜3曲が盛り上がれば「よかったよー」と言ってもらえる。人間は途中の事はあんまり覚えていない適当な生き物なので、終わりだけはとりあえず間違えないようにしよう。最後にこの曲をかけたいんだ!!という物があればそれを最終目標としたセットを組めばいいだけで、途中の構成力はやってるうちに身につくし、後述する考え方を導入する事でそこまでに至る曲線を描くためのセットの組み方も簡単になるかもしれない。
ポイント1:とりあえず最初と最後をどうしたいか考えよう。特に最後。
最初と最後を大体どんな風にしたいかが決まったら、60分をざっくり三等分しよう。20分づつの3ブロックに分ける。とりあえず20分づつとしたがこの配分は慣れてきたらどんどん変えていい。パーティであれば最初のブロックは「フロアを自分の守備範囲に持っていくブロック」という事になる。序盤戦なので硬く大人しいもので行くもよし、いきなり1曲目でドンと切り替えて自分の方に持ってきてもいい。筆者的には序盤はジワジワっと行くことが多いので、大人しいトラックを多めに配分している。上げていくのは残り40分の仕事と割り切って自分の手持ちのトラックの中で大人しいものを考える。あと音数が少なめで繋ぎやすいトラックを意識的に配置することも多い。自宅だと問題ないのだがフロアでの使用を考えた時に機材慣れしてないとか音響慣れしてないとか、まー現場ならではの事柄に体がついていかない事もあるので、自分に余裕を作りやすい構成にしておくという役割も持たせておきたい。序盤と侮るなかれ、やる事はいっぱいある。中盤と後半への足がかりと考えて、ここが良ければ後も生きる。
ポイント2:中盤〜後半のカタルシスについて考えつつ組んでみよう
60分3分割の真ん中のブロック、中盤ブロックからはテンション曲線も右肩上がりに上がってくる所だから選曲もそれに従って序盤セクションに対して色々と変化を加えていく。例えばちょっとトライバルビーツにしてみようかな、とか、ボーカル物を増やしてみようかな、とか、かつて渋めのフロアアンセムだった曲とかそのリミックスとか。序盤と最終ブロックの間にどんな曲線を描きたいのか。最終ブロックに対してどんな盛り上がり方で移行していくのかを考えた選曲となる。
ポイント3:中盤は色々な実験が出来るブロック。楽しんでみよう
最終ブロックはやはり自分の味を出しつつフロアの盛り上がりを期待していきたい所なので、それこそフロアアンセムを投入してもいいし「自分はこれピークタイムチューンだと思うんだけどどうよ!!」と思える曲を投入してもいい。やりたい事をここに詰め込んでいこう。セットは最後が特に肝心だと先述したがやはりここにその人の味が出るところだと思うし、パーティの途中であればどう後の人に渡すかという構成力の見せ所でもある。誰もが知ってるアンセム連発も盛り上がるが、どうせなら「これ知らないだろ!でも格好いいだろ!」と自分の感性を優先させた方が後々良い気がする。自分の本当に好きなことをやりましょう。ここの構成は95%くらい自分のエゴを出しましょう、そういうブロックだと思っている。特に大事なのは最後の3曲。後の人が居る場合であれば最後から2曲目を大本命、このセットはこの曲が最終目標なんだ!という曲を配置しておき、最後の1曲は後の人のことを考慮して少し抑えめに、お客さんが次の人に意識を移行しやすい割と単調めな曲を選んでおくと良いかもしれない。持ち時間の残り15分を切ったらラスト3曲に移行するつもりでいると「全部出し切れなかった…」と後悔する事も少ない。
ポイント4:本当にやりたい事をやりましょう
この持ち時間を3ブロックに分割した場合、キーとなる曲は4曲となる。最初の曲・序盤から中盤への移行曲・中盤から後半への移行曲・最後の曲……といったように、3ブロックをどう展開させるか決まっていればこの4曲を決める事も比較的たやすい。この4曲は4コマ漫画などでおなじみの「起・承・転・結」にあたる。
A・最初の曲
B・序盤ブロックと中盤ブロックの両方の性質を持った曲
C・中盤ロックと最終ブロックの両方の性質を持った曲
D・最後の曲(後の人が居る場合は最後から2番目とする曲)
A--序盤--B--中盤--C--後半--D
|<--------- 60min -------->|
4曲を仮にこう定義付けるとわかりやすいだろうか。これを意識して曲を試聴・購入するようになると俄然面白くなる。「最初ノンビートだけど格好いい、これはMIXの最初用トラック」「これは序盤に使える曲」「渋いネタだがビートはハード!これは後半にかけて盛り上がる曲」「後半のブレイクで急にトライバルになるからジャンル転換に使える!」「自分がブースでハンズアップする姿が見えた!俺アンセムや!最終ブロック用の曲!」などなど、いずれその曲をどう使っていくか、どのブロックで使っていくか、目的意識がはっきりした曲の購入方法はとても面白い。ぶっちゃけそういう意識で購入した曲を組み合わせていくだけでセットが一つ誕生してしまうのだから。セットをブロック単位、曲をそのブロックを構成する部品単位で考えて購入してみよう。
ポイント5:起承転結はDJMIXにも通用する考え方
上記に挙げた方法論は勿論それが全てではなく、あくまでも参考程度の話だけどもセットの全ての部分に「意図がある」とするための例である。「なぜここでこの曲を入れたのか」には理由があるし、後でセットリストを書いてそれを見た人に何となく「そこで、その曲は、そういうことか」と思わせたらそのセットにはちゃんと理由があるのだ。これを繰り返していくうちにどんどん頭で考えずに体感的に選曲したりセットが組めるようになってくる。そういう力については「構成力」と呼んで良いのではないかと思う。
ポイント6:全ての曲配置には理由があるはず。後で理由付けをしてみよう
本稿の例では60分3ブロックという構成で書いたが、勿論60分だけではなくその倍の120分4ブロックや5ブロック、あるいは45分2ブロックや3ブロック、という風に変化させる事だってある。ケースバイケースで各ブロックの長さや起承転結として使う曲を変えてすぐに対応していけるのがいずれ身につけて行きたい「応用力」ではなかろうか。
ハイ、君に○分の時間を差し上げますのでセット組んでねーよろしくーなんて言われてはいそうですかなんて組めたら苦労しないわけで、かといって現場でお客さんの反応を見ながらやってますセットは組んでいきませんよ(キリッ)なんて玄人の意見はあるレベルまではまったく役に立たないわけで、その辺どうすんのっていう部分について、意識の骨格的な所を考えていきたい。とりあえず「それっぽい」セットを組むための意識付けのきっかけになればいい、そういう薀蓄です。
とりあえず仮に60分のセットを組むとしよう。15分でも30分でもいいのだがテクノのMIXとなれば大体この位は欲しいし色々なパーティでも60分ワンセットくらいでタイムテーブルが組まれる事がほとんどだし、60分という長さは色々なことを考えるにあたってとても都合がよい時間なのでそれでセットを組むことを仮定しておきたい。
まずはテンション曲線を考えよう。最初はどの程度の盛り上がりでスタートして、終わりはどんな風に終わりたいのか。終わりよければ全て良しという言葉もある通り、終わり方が最も重要なのは間違いない。最初でトチっても途中で何か間違えても、最後の2〜3曲が盛り上がれば「よかったよー」と言ってもらえる。人間は途中の事はあんまり覚えていない適当な生き物なので、終わりだけはとりあえず間違えないようにしよう。最後にこの曲をかけたいんだ!!という物があればそれを最終目標としたセットを組めばいいだけで、途中の構成力はやってるうちに身につくし、後述する考え方を導入する事でそこまでに至る曲線を描くためのセットの組み方も簡単になるかもしれない。
ポイント1:とりあえず最初と最後をどうしたいか考えよう。特に最後。
最初と最後を大体どんな風にしたいかが決まったら、60分をざっくり三等分しよう。20分づつの3ブロックに分ける。とりあえず20分づつとしたがこの配分は慣れてきたらどんどん変えていい。パーティであれば最初のブロックは「フロアを自分の守備範囲に持っていくブロック」という事になる。序盤戦なので硬く大人しいもので行くもよし、いきなり1曲目でドンと切り替えて自分の方に持ってきてもいい。筆者的には序盤はジワジワっと行くことが多いので、大人しいトラックを多めに配分している。上げていくのは残り40分の仕事と割り切って自分の手持ちのトラックの中で大人しいものを考える。あと音数が少なめで繋ぎやすいトラックを意識的に配置することも多い。自宅だと問題ないのだがフロアでの使用を考えた時に機材慣れしてないとか音響慣れしてないとか、まー現場ならではの事柄に体がついていかない事もあるので、自分に余裕を作りやすい構成にしておくという役割も持たせておきたい。序盤と侮るなかれ、やる事はいっぱいある。中盤と後半への足がかりと考えて、ここが良ければ後も生きる。
ポイント2:中盤〜後半のカタルシスについて考えつつ組んでみよう
60分3分割の真ん中のブロック、中盤ブロックからはテンション曲線も右肩上がりに上がってくる所だから選曲もそれに従って序盤セクションに対して色々と変化を加えていく。例えばちょっとトライバルビーツにしてみようかな、とか、ボーカル物を増やしてみようかな、とか、かつて渋めのフロアアンセムだった曲とかそのリミックスとか。序盤と最終ブロックの間にどんな曲線を描きたいのか。最終ブロックに対してどんな盛り上がり方で移行していくのかを考えた選曲となる。
ポイント3:中盤は色々な実験が出来るブロック。楽しんでみよう
最終ブロックはやはり自分の味を出しつつフロアの盛り上がりを期待していきたい所なので、それこそフロアアンセムを投入してもいいし「自分はこれピークタイムチューンだと思うんだけどどうよ!!」と思える曲を投入してもいい。やりたい事をここに詰め込んでいこう。セットは最後が特に肝心だと先述したがやはりここにその人の味が出るところだと思うし、パーティの途中であればどう後の人に渡すかという構成力の見せ所でもある。誰もが知ってるアンセム連発も盛り上がるが、どうせなら「これ知らないだろ!でも格好いいだろ!」と自分の感性を優先させた方が後々良い気がする。自分の本当に好きなことをやりましょう。ここの構成は95%くらい自分のエゴを出しましょう、そういうブロックだと思っている。特に大事なのは最後の3曲。後の人が居る場合であれば最後から2曲目を大本命、このセットはこの曲が最終目標なんだ!という曲を配置しておき、最後の1曲は後の人のことを考慮して少し抑えめに、お客さんが次の人に意識を移行しやすい割と単調めな曲を選んでおくと良いかもしれない。持ち時間の残り15分を切ったらラスト3曲に移行するつもりでいると「全部出し切れなかった…」と後悔する事も少ない。
ポイント4:本当にやりたい事をやりましょう
この持ち時間を3ブロックに分割した場合、キーとなる曲は4曲となる。最初の曲・序盤から中盤への移行曲・中盤から後半への移行曲・最後の曲……といったように、3ブロックをどう展開させるか決まっていればこの4曲を決める事も比較的たやすい。この4曲は4コマ漫画などでおなじみの「起・承・転・結」にあたる。
A・最初の曲
B・序盤ブロックと中盤ブロックの両方の性質を持った曲
C・中盤ロックと最終ブロックの両方の性質を持った曲
D・最後の曲(後の人が居る場合は最後から2番目とする曲)
A--序盤--B--中盤--C--後半--D
|<--------- 60min -------->|
4曲を仮にこう定義付けるとわかりやすいだろうか。これを意識して曲を試聴・購入するようになると俄然面白くなる。「最初ノンビートだけど格好いい、これはMIXの最初用トラック」「これは序盤に使える曲」「渋いネタだがビートはハード!これは後半にかけて盛り上がる曲」「後半のブレイクで急にトライバルになるからジャンル転換に使える!」「自分がブースでハンズアップする姿が見えた!俺アンセムや!最終ブロック用の曲!」などなど、いずれその曲をどう使っていくか、どのブロックで使っていくか、目的意識がはっきりした曲の購入方法はとても面白い。ぶっちゃけそういう意識で購入した曲を組み合わせていくだけでセットが一つ誕生してしまうのだから。セットをブロック単位、曲をそのブロックを構成する部品単位で考えて購入してみよう。
ポイント5:起承転結はDJMIXにも通用する考え方
上記に挙げた方法論は勿論それが全てではなく、あくまでも参考程度の話だけどもセットの全ての部分に「意図がある」とするための例である。「なぜここでこの曲を入れたのか」には理由があるし、後でセットリストを書いてそれを見た人に何となく「そこで、その曲は、そういうことか」と思わせたらそのセットにはちゃんと理由があるのだ。これを繰り返していくうちにどんどん頭で考えずに体感的に選曲したりセットが組めるようになってくる。そういう力については「構成力」と呼んで良いのではないかと思う。
ポイント6:全ての曲配置には理由があるはず。後で理由付けをしてみよう
本稿の例では60分3ブロックという構成で書いたが、勿論60分だけではなくその倍の120分4ブロックや5ブロック、あるいは45分2ブロックや3ブロック、という風に変化させる事だってある。ケースバイケースで各ブロックの長さや起承転結として使う曲を変えてすぐに対応していけるのがいずれ身につけて行きたい「応用力」ではなかろうか。